ともに大型連勝で迎えた阪神と巨人との首位攻防戦第1ラウンドは、首位阪神が本塁打攻勢で快勝した。今季の阪神の好調の要因はどこにあるのか? 日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏がチェックした。

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序盤の3回表に5点リードした阪神は、エースの西勇が先発。楽勝かと思った試合だが、中盤は1点差まで詰め寄られた。もし逆転負けでもしたら、今後の戦いにも影響しそうな展開になると思ったが、終わってみれば10-5で優勝争いの最大のライバル・巨人を押しきり勝ち。今季好調なチーム力が目立った試合になった。

層の厚さを見せつけたのは、6回だった。サンズの1発で再びリードを2点にすると、打席の回ってきた西勇に代打・北條を送った。得点圏に走者がいるわけでもなく、この代打は追加点をとりにいくというより、継投でしのぐという意味合いの方が強かったのではないか。狙い通りに岩貞-小林-岩崎の継投で巨人打線を無失点で封じ込んだ。

9回で打ち切りの今季、投手力を前面に押し出した試合を続けている。エースの西勇は5点をリードした途端、逆球と高めへの抜け球が多くなった。これはいい投手にありがちな“落とし穴”。粘り強く投げるタイプの投手が、リズムよく打たせて打ち取ろうとするとストライクゾーンに球が集まり、打ち込まれることがある。慌てて修正しようとしても、簡単にはいかない。エースで大量リードした試合に逆転負けすれば、今後の戦いにも影響すると予感させた。しかし、6回裏はリリーフした岩貞が3人でピシャリ。あとは一方的な阪神ペースで試合は進んでいった。

今季の阪神には、マイナス部分がない。昨年までいた外国人選手は開幕からスタンバイ。新戦力という点では、ショートの中野の存在が大きい。当初、スローイングに難があると聞いていたが、守備力はなかなかのもの。広角に打てる打力とともに、とてもドラフト6位の選手とは思えないような活躍が続いている。そして2番の糸原も打撃は好調。攻撃面で状態が上がらない近本の穴を埋めるどころか、守備面でも二塁のレギュラーをガッチリとキープ。ここ数年、二遊間が固定できずに苦しんでいたが、守備面での不安が解消している。

新外国人が合流すれば、外国人の競争も激しくなるだろう。ルーキーの佐藤輝の存在もチームに活気をもたらせているし、2軍にいる投手の名前を見ても、投手力には余裕を感じる。この勢いは、しばらく衰えそうもない。(日刊スポーツ評論家)