日刊スポーツ評論家の権藤博氏が古巣・中日の戦い方についてポストコロナ時代も踏まえた新たな議論の必要性を唱えた。本拠地バンテリンドームは両翼100メートル、中堅122メートルの広さに加えて4・8メートルの高い外野フェンスでもっとも本塁打の出にくい球場と言われる。この特徴を最大限に生かしたチーム運営の必要性と同時に外野フェンスの一部改修などで一考の余地ありとした。

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私は投手出身ですからバンテリンドームのような広い球場は好きです。守り重視の野球が勝率を高めるという原則は今も不変であり、この球場の個性を生かした戦いに徹すれば中日は常に優勝争いが可能だと考えています。

とはいえ、今季の長打力不足は深刻。ゴールデンウイークを終えた時点で本拠地17試合を消化。相手チームに打たれた本塁打は13本に対して中日は4本塁打。勝敗こそ7勝8敗2分けと健闘こそしていますが、極端な本塁打欠乏症が借金4で下位に沈む原因のひとつであることは間違いありません。

コロナ禍による入場制限なども続き、野球界も厳しい時代が続いています。だからこそ、事態が収まり、近い将来、普通の日常が戻ることを祈りつつ、今こそ幅広い議論をしてみてはどうでしょう。

私は本塁打を打てないから球場を小さくすべき、といった短絡的な考えには否定的です。実際、97年のドーム誕生から投手を中心にした守り勝つチームづくりへと方針転換。その結果、04年から引き継いだ落合監督のもとで黄金時代を築きました。今も守り勝つ野球に徹することが勝利への近道であることに変わりはありません。現場はこの球場の個性を生かした一貫性のあるチーム運営に徹するだけで、運営方針も維持すべきだと思います。

その上で議論すべき一例をあげるとすれば4・8メートルの高い外野フェンスの見直しです。このフェンスを今の内野スタンドから続くフォーム(外形)に違和感ない形で低くすることができれば、現状ではあり得ない外野手が本塁打性の打球をつかみ取るシーンに出会ったり、フィールド内の選手の動きが見やすくなるかもしれません。打者に心理面で変化が生まれ、本塁打増につながる可能性もあるでしょう。

ポストコロナ時代、多くの人に球場に足を運んでもらうため、現場もスタジアムも一体となって魅力あるコンテンツにブラッシュアップしていくことが必要です。今こそみんなで知恵を絞り、広くファンの声を聞き、多面的で開かれた議論をして欲しいと思います。(日刊スポーツ評論家)

◆バンテリンドームナゴヤ 1997年(平9)3月12日にナゴヤドームとして開場。両翼100メートル、中堅122メートル、外野フェンス高4・8メートル。地上6階(天井高64・3メートル)でアリーナ使用時最大収容人員は4万9427人。座席数3万6370席。中日主催試合のほか各種イベントで使用。運営会社は株式会社ナゴヤドーム。今年から興和が5年間のネーミングライツ(命名権)を取得。所在地は名古屋市東区大幸南1の1の1。