新人王の有力候補の楽天早川隆久投手には現時点での明確な課題がある。左打者への内角攻めだ。左打者5人を並べてきた阪神打線に対し、2巡目までの計10人に、逆球を除いて狙い通りに内角へ投じたのは2球だけだった。これでは少なすぎる。

3回の近本の打席で2-2から6、7球目と内角要求の直球が真ん中に入り、ファウルされた。この打席は打ち取ったが、5回2死一塁では外角を狙った直球が真ん中高めに入り、思い切り踏み込まれて逆転2ランを浴びた。以前から実際に投げなくても「内角に行くぞ」と思わせるのも内角攻めだと言っている。だが早川の場合は相手から「投げて来られない」と思われてしまう。

左打者の内角を突けないから対戦打率も3割3厘と対右の2割1分4厘より、数字が悪い。中日時代にバッテリーを組んでいた左腕の大野雄も、かつては対左を苦にして当時DeNAの筒香、梶谷によく打たれていた。それでもスクリュー軌道のフォークを内角に投げられるようになり、幅が広がって少しずつ対応できるようになってきた。

早川が内角に攻められないのは技術よりも、メンタル面が影響しているのかもしれない。パ・リーグの規定投球回に到達した投手で死球は最少タイの1個。もちろん、ぶつけろということではないが、遠慮なく攻めることは必要だ。

加えてこの日は球審のクロスファイアに対する判定が一段と厳しかった。3回2死二塁ではマルテの懐にゾーンぎりぎりに3球投げたがボール判定。だがフルカウントからまた内角を要求され、わずかに甘く入った直球を適時打とされた。バッテリーとして選択ミスで歩かせたくない投手心理からすれば同じところを狙っても、どうしても甘く入る。外角へ投げるべきだったし、先輩捕手の太田に要求されたのなら遠慮なく首を振ってもいい局面だった。

素晴らしいルーキーであることは間違いない。ゾーン内で勝負をするタイプだから、テンポも良くなる。新人王を争うオリックスの2年目左腕の宮城とともに、現在の球界で3本の指に入る左腕だ。左打者の内角を攻められれば、3巡目に入っても攻めの幅が広がり、この日の5回交代のようなことも少なくなり、イニングを積み重ねられる。課題がクリアできれば、もっと数字が伸びる投手だ。(日刊スポーツ評論家)

3回表阪神2死、中野に左前打を浴びる早川(撮影・江口和貴)
3回表阪神2死、中野に左前打を浴びる早川(撮影・江口和貴)