日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)が13日、中日の1軍沖縄・北谷キャンプに「潜入」し、新生ドラゴンズの空気感に驚いた。立浪和義新監督(52)のもと、常勝軍団を築いた落合監督時代をほうふつさせる緊張感、プラス若手がのびのびプレーするハイブリッドな“立浪カラー”にチームの変化を確信。昨季リーグ5位で目立った補強も行っていないが、侮れない存在と指摘した。【取材・構成=佐井陽介】

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紅白戦が終わった直後、立浪監督が集合をかけた際の選手の姿勢が印象に残りました。ダラダラと駆け寄る選手は皆無。キビキビと輪を作った後も、ピシッと背筋を伸ばす姿ばかりが目立ちました。

一事が万事。何げない集合ひとつからも、チームの雰囲気は見て取れます。両足ともに緩めない立ち方、指揮官の言葉を一言も漏らさないように集中する選手たちを眺めながら、自分が現役時代に重圧を感じたドラゴンズのピリリとした空気感を思い出しました。

試合中には登板を終えた投手が次々に落合英二ヘッド兼投手コーチに「ありがとうございました!」と声を張り上げていました。チャンスをもらえる環境が当たり前ではないという競争意識も、ヒシヒシと伝わってきました。

とはいえ、若手選手が萎縮しているかといえば、決してそうではありません。北谷球場に足を踏み入れて、新生ドラゴンズの印象は一気に変わりました。報道等々では盛んに「厳しさ」が強調されていますが、伸び伸びした雰囲気も確実に尊重されていました。

若手中心の紅白戦では、両ベンチから次々と明るい声かけが響き渡っていました。ヤジというよりは、次のプレーに向けた前向きな内容がほぼすべて。時には笑いを誘うような表現も、ちゅうちょすることなくチョイスしている姿が印象的でした。

かつて自分たちが苦戦した落合博満監督が率いていたドラゴンズを象徴するスキを許さない空気に、若手選手特有の伸びやかさがミックスされたようなイメージです。いわゆる「ハイブリッド型」のムードは今後、チームの底上げにつながっていきそうな予感がします。

中日には有望株の選手が多くいます。20歳の石川昂弥内野手は近い将来4番を張れる実力の持ち主です。紅白戦でリードオフマンを務めた19歳の岡林勇希外野手、3番を任された24歳の三好大倫外野手ら、伸び盛りの選手の名前をあげればキリがありません。

厳しさと自由が融合した空気感には、若手選手たちの成長を後押ししていきそうな気配を感じました。昨年はセ・リーグ5位。目立った補強もないまま新シーズンを迎えますが、侮れない存在になりそうです。(日刊スポーツ評論家)

中日キャンプを視察に訪れた本紙評論家の鳥谷敬氏(左)は福留と話す(撮影・前岡正明)
中日キャンプを視察に訪れた本紙評論家の鳥谷敬氏(左)は福留と話す(撮影・前岡正明)
中日キャンプを視察に訪れた本紙評論家の鳥谷敬氏(左)は福留と話す(撮影・前岡正明)
中日キャンプを視察に訪れた本紙評論家の鳥谷敬氏(左)は福留と話す(撮影・前岡正明)