中日の2年目右腕・高橋宏斗投手(19)は、ほろ苦デビューとなった。DeNA戦でプロ初登板初先発。5回5安打4失点で初黒星を喫した。それでも、日刊スポーツ評論家の和田一浩氏は将来性を高く評価。次回の登板に期待した。

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高卒2年目の20年中日ドラフト1位・高橋宏が、強打のDeNA戦でデビューした。5回4失点で敗戦投手にはなったが、お世辞抜きに将来性を十分に感じさせる内容だった。

高校時代は球威はあったものの、腕が振り遅れる傾向があった。腕が振り遅れるピッチャーは、制球力が悪く、前の肩(左肩)が早く開いてしまうため、打者からは「球が見やすい」という欠点がある。しかし、テークバックを小さくすることにより、弱点は解消していた。

真っすぐの質も上がっている。シュート回転する真っすぐが減り、左打者の内角に対してスライダー回転気味に食い込んでくる真っすぐは威力満点だった。

せっかく力のある真っすぐがあるのに、序盤は変化球が多かった。特に残念だったのは2回で、先頭打者の宮崎にカウント1-1から内角高めの真っすぐを打たれると“変化球投手”に急変した。

次打者の関根には、1ボールからスプリットを2球続けて空振りを奪ったが、4球目のスプリットが高めに浮いてレフト前に打たれた。柴田は送りバントのため真っすぐを続けたが、戸柱と投手の石田にはカウント1-0からスプリットを投げ、犠牲フライとセンター前タイムリーで2点を失った。

癖が出ていると思えるほどスプリットを狙い打ちされた。これでリズムが狂ったのか、3回も変化球が多く、2四球、1死球、1安打で2失点。序盤の3イニングで真っすぐは40球で変化球は30球。オープン戦で見せた「力で押すピッチング」は見る影もなかった。

これで終わっていたら、次回の反省点として課題を残しただけだった。しかし4回と5回は別人のように真っすぐで押すピッチングが復活。この2イニングは真っすぐが19球で変化球が8球。結果も無安打1四球で無失点だった。

おそらくベンチから「もっと真っすぐを投げさせろ」という指示が、捕手の木下に出たのだろう。木下の反省点になるが「若い投手に勝たせたい」という思いが強すぎると、どうしても変化球でかわそうとしてしまう。結果的に高橋宏の持ち味を消してしまった。

黒星デビューになったものの、高橋宏は勉強になったと思う。ピッチングの基本は真っすぐで、本来の真っすぐさえ投げられれば、プロの世界で十分にやっていける。次回の先発が、楽しみだ。(日刊スポーツ評論家)

中日対DeNA 力投する中日先発の高橋宏(撮影・森本幸一)
中日対DeNA 力投する中日先発の高橋宏(撮影・森本幸一)
中日対DeNA 2回表DeNA攻撃終了、ベンチへ戻る高橋宏(撮影・森本幸一)
中日対DeNA 2回表DeNA攻撃終了、ベンチへ戻る高橋宏(撮影・森本幸一)