中日は立浪和義新監督(52)のもと、まずまずのスタートを切った。開幕から17試合を消化して10勝7敗で、3位につける。

98年横浜日本一監督で中日OBの日刊スポーツ評論家・権藤博氏はこの要因の一つに木下拓哉捕手(30)の固定起用をあげ、このまま長年の課題だった正捕手問題が解消されれば上位浮上も可能、とした。

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中日は、いいスタートを切りましたね。何より評価できるのは、ベンチが一貫性のある野球をやっていることです。

課題だった攻撃面で言えば、3年目の石川昂を我慢強く使い続け、3番左翼は競争ポジションとしてうまく使い分けている。ここまでは、もともと強力な投手陣をベースに、相手ミスにつけ込みながら、終盤の勝機をつかみ取るという形で勝ち星を拾っています。

まだまだ本物の強さとは言い切れませんが、長年の課題だった正捕手に木下を完全固定していることが、防御面を安定させ、攻撃面に勢いを与えていると見ています。

時代は令和となり、捕手ですら投手との相性や適性、日々の状態を見ながらローテーション方式で起用する方が合理的…そんな声があることは承知しています。頭も体もフル回転。ときには投手との濃密なコミュニケーションも求められるなど、捕手は確かに重労働で、143試合フル出場は容易ではありません。ただ、1人の捕手にマスクをかぶり続けられることほど、相手チームにとって嫌なことはないのです。

捕手は出場を重ねれば重ねるほど経験値は高まり、対応策は増える。結果、長期的な視点で投手陣を引っ張ることができるようになる。こうなれば本当に強い。逆に言えば、長期低迷が続いた中日の最大の要因は正捕手不在に行き当たります。課題を解決する資質と条件を十分に備えていた木下もここ2年、微妙な起用が続いていました。

新たな首脳陣がその能力を見極め、覚悟を持った起用を続けていることが開幕戦線の結果につながったとも言えます。もちろん勝負の世界はそう簡単ではありませんが、木下の固定起用が続けば、勢いは本物となり、チーム力が急速にレベルアップしていくことは間違いないと見ています。(日刊スポーツ評論家)

◆捕手の全イニング出場 2リーグ分立後、2人しかいない。いずれもパ・リーグで、63年南海(現ソフトバンク)野村克也150試合と、03年ダイエー(現ソフトバンク)城島健司140試合。63年の野村は、史上2人目で捕手では現在も唯一の50本以上となる52本塁打を記録。03年城島はチーム最多の34本塁打と同2位119打点で、日本一に貢献した。今季12球団でフルイニング出場中の捕手は木下1人。セ初の快挙への挑戦権を持ち続けている。

3日、完封勝利の柳裕也は木下拓哉とハイタッチ
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