今の阪神にはこういう1勝も必要だろう。6連勝で勢いづいた後の連敗で重苦しい雰囲気だったから、是が非でも勝ちたかった。対ヤクルトにカード3連敗を喫していれば、せっかくの大型連勝が帳消しになってしまっていた。
9回のサヨナラ勝ちの瞬間だけにスポットを当てれば、ヤクルトベンチも最善を尽くした。2死一、三塁から糸井を申告敬遠で歩かせて満塁にした。ここで山本に対したヤクルト5番手・大西が押し出し四球を出すなど普通は考えにくいことだ。
何を言いたいかというとだれかが打って勝ったわけではない。ゲームの流れに乗った“勝負のアヤ”によってたぐり寄せた1勝だった。その流れの潮目になったのは、同点に追いついた5回のロハスが選んだこれまた押し出し四球だ。
あえて言うなら、阪神に流れを傾けたのは、打つほうではなく、終盤のリリーフ陣だった。7、8、9回をアルカンタラ、湯浅、岩崎のリレーで得点を許さなかった。これで阪神ベンチは「いける」と踏んだはずだった。
野球では相手のミスによって勝つのはよくあることだから、今後も着実に1勝を積み重ねていくしかない。特に「二塁」「左翼」「右翼」の3つのポジションについては、ファームの選手にもとって代わるチャンスがあるわけで、競争心をかき立てながら戦いたいところだ。(日刊スポーツ評論家)