大野雄大はナイスピッチングというしかない内容だった。初回の投球を見た時に、力みすぎているかなという印象を受けたが、イニングを重ねるごとに、どの球種に対しても腕を振るという意識で投げていることが伝わった。ボール先行でも、直球をゾーンの中に置きにいく姿は見られなかったし、楽にストライクを取ろうというボールは1球もなかった。

しっかりと腕を振っていたから、スライダーやツーシーム、フォークといった変化球がさえ、阪神の打者も見逃しや空振りが目立った。また変化球を投げ損なった後、投手というのは、修正しよう、コントロールしようとするものだが、大野雄は腕を振るという姿勢を貫いた。1球たりとも気持ちを抜くことなく、最後まで投げ続けたことが10回2死までパーフェクト投球という偉業につながった。

一方で青柳も球威があり、シュート系の球がものすごくキレていた。中日は8回、阪神は9回の攻撃でそれぞれ代打を送らずに、そのまま先発投手を立たせた。途中で代えられるような投球ではなく、両監督ともいけるところまで投げさせる、それだけの投球を見せた。両投手とも文句のつけようがなく、シーズンはまだ100試合以上を残しているが、今年一番の投手戦といってもいいだろう。

阪神の打線に目を向ければ、気になるのは大山だ。現在の状態を見れば、1本打ったから変わる感じでもない。4番を打つ打者として長打を期待されているのは当然だが、どの状況でも同じスタイルで振ってしまっている。初球と追い込まれてからのタイミングの取り方が変わらない。「三振するな」「当てにいけ」と言うのではない。2ストライクになってから、足の上げ方を小さくしたり、タイミングを早めにとるなど、状況に応じた対応は必要だ。カウント不利な状況でも同じスイングを繰り返している。投球に対して、コンパクトにコンタクトする打撃を身につけないといけない。

また、この試合では3打席目まではすべて先頭打者だったが、先頭は出塁することが得点につながる。現状の大山は確率の悪い打撃を続けている。20発打っても2割2分ではチームは勝てない。10発でも打率3割以上を打って出塁率を上げれば、チームの勝ちにつながる。大山だけでなく、近本は変化球を引っかけての凡打を繰り返した。失敗を次にどう生かすかが大事だ。大野雄は完璧な内容だったが、阪神打線は青柳に借りを返さないといけない。(日刊スポーツ評論家)

中日対阪神 10回表阪神2死、佐藤輝に中堅への二塁打を許した大野雄(撮影・前岡正明)
中日対阪神 10回表阪神2死、佐藤輝に中堅への二塁打を許した大野雄(撮影・前岡正明)