巨人は坂本、吉川がケガで離脱し、中日も木下、石川昂、鵜飼がコロナで離脱。苦しい戦力の中、どういう戦いをするかを注目していた。長年、巨人の監督を務める原監督に“一日の長”があった。

原監督といえば「苦しいときこそ仕掛けてくる」というイメージがあるだろう。監督としての実績は文句なし。起用している選手も監督の目指している野球を理解している。その圧力が、中日に圧力をかけた。

4回無死一、二塁から5番に起用した中田に送りバント。プロ入りしてから犠打を記録していないとはいえ、中田の打率は2割を切っていた。先発の大野雄も左腕とはいえ、右打者の被打率1割3分6厘(左打者は3割4厘)。本来、消極的な戦術に見える送りバントだが、攻撃的な作戦に思えた。送りバントは成功し、大城のセカンドゴロの間に1点を挙げた。

7回2死一、三塁からは一塁走者のウォーカーを走らせ、ポランコの当たりは三遊間を抜けて勝ち越しタイムリー。ランエンドヒットかダブルスチールだったのかは分からないが、仕掛けていなければショートゴロで得点はできなかった。

立浪監督も仕掛けていた。ベンチが動かなければ得点できない打線なのは分かっていたのだろう。3回無死一塁からはエンドランを仕掛け、5回には2番の岡林に1死から送りバントをさせた。それでも得点できたのは2回の石橋のタイムリーと6回のビシエドのソロだけだった。

中日は「あと一歩」の圧力がかからない。4回2死一塁、8番の石橋は初球を打ってファーストフライ。6回無死一塁からは5番の阿部がカウント2-1から外角低めのスライダーを引っかけてショートゴロの併殺。力が足りないといえ、もう少し狙い球を絞るなど、工夫がほしかった。立浪監督のもと、しぶとい野球を実践しているが、まだまだ監督の意図する野球は届いていない。

巨人は5回2死一塁から一塁走者の丸が盗塁を仕掛けた。アウトにはなったがポランコのカウントはツーナッシングだった。盗塁が失敗しても次の回は仕切り直しでポランコから始まる打順。ささいなことだが、抜け目のない攻撃ができる。戦力が整っていない状況だが、全員野球で圧力をかけられている。

両チームとも、ここが我慢のしどころ。主力が復帰するまで、ひとつでも勝ちを拾える野球ができるかが重要になってくる。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 8回裏巨人無死一塁、左中間に2点本塁打を放った中田(右手前)を迎える原監督(左から2人目)(撮影・鈴木みどり)
巨人対中日 8回裏巨人無死一塁、左中間に2点本塁打を放った中田(右手前)を迎える原監督(左から2人目)(撮影・鈴木みどり)