さすがのひと言だった。今試合から1軍復帰した坂本が、いきなり5打数3安打1打点。坂本の実績から考えればスタメン出場したならばこれぐらいの活躍は当たり前のように感じてしまうが、打席内容もチームに与える影響も「さすが」と思わせる中身を伴っていた。

3本のヒットを振り返ってみる。2回無死から放ったライト前ヒットは、カウント1-2からの外角ギリギリの真っすぐ。先頭打者であり、追い込まれてからのバッティングとしては文句なし。コースなりに逆らわず、難しいコースの球をヒットにした。

第2打席は3回2死一、二塁、先制のチャンスだった。カウント2-1でバッティングカウントだが、外角低めチェンジアップをバットの先で拾うようにしてレフト前へライナーのタイムリー。

これが三遊間をゴロで抜けるようなヒットであれば「転がった方向がよかっただけ」とも言えるが、内野の頭を越える打球を打つには技術が必要。坂本の技術力の高さを見せつけるタイムリーだった。

そして3打席目は、5回無死一塁からセンター前ヒット。初球の真ん中低めのストレートをはじき返した。

3本のヒットは、どれも甘い球ではない。3本目のヒットこそコースは甘かったが、並の打者なら1本もヒットになっていない可能性が高い球だった。

チームにとっても、存在感の大きさを改めて感じただろう。本来は勝負が早いタイプで「5番打者」というタイプではない。しかし4番を打つ岡本和が本調子ではなく、坂本を後ろで打たせることで、ストライクゾーンで勝負させようという狙いがあったのだと思う。

岡本和の2本のヒットは、いずれも真ん中高めの真っすぐだった。どちらのヒットも引っ張りにいって強烈なドライブがかかった打球だった。本来ならホームランにできる打球で、本調子ではないことを証明するような当たりだった。

もし坂本が「5番」に控えていなかったら、岡本和への攻め方は変わっていただろう。「4番打者」に対して長打を警戒した攻め方ではない。カウントを悪くする前に打ち損じを期待したような攻め方だった。

まだ坂本が復帰して1試合だけだが、打線がつながりそうな予感はある。ケガ明けの試合で、余裕がある試合展開であれば途中で休養させたかっただろう。しかし2点しかリードのない状況では代えられない。あとは坂本がどれだけ踏ん張り続けられるか。逆転優勝の可能性は、坂本にかかっている。(日刊スポーツ評論家)