阪神にとっては、10回で勝ち切らないといけない試合だった。抑えのアルカンタラが先頭打者の坂倉を迎えた場面の配球がポイントになった。

梅野は3球続けて内角に直球を要求していた。球威で押して、ファウルを打たせて、カウントを稼ごうという考え方があったのかもしれない。しかし、この状況では僅差で1発を警戒しないといけない。ましてや坂倉は長打力のあるクリーンアップだ。これは結果論で言うのではなく、セオリーとしては、打者の目線の最も遠いところ、つまり外角低めが長打を防げるコースから慎重に入る必要がある。外角を中心とした組み立ての中で、内角を使うにしても、踏み込ませないためにボール球にするといった使い方がある。1発を打たれてはいけない場面で、セオリーとは違う配球を選択したというのは、反省すべきだろう。

打線を見れば、佐藤輝が本塁打狙いではなく、逆方向に打って走者をかえすなど状況に応じた打撃が光った。昨年からの成長を感じさせる内容で、4番の役割を担っている。6月は1本塁打だけで、アーチを量産している5番大山と比較されるだろうが、全く意識する必要はない。打撃は確かにいい状態とはいえないが、それでも打点を挙げている。大山が調子を落とした時に打てばいいし、本塁打はそのうちポンポンと出るだろう。

4番の働きで同点に追いつき、勝ち越せた。それだけに、この1敗は痛い。広島に対して、未勝利ということで、また次戦にプレッシャーがかかり、さらに流れを悪くした。勝てないということで、相性への意識はどうしても出てしまう。交流戦から勢いが出ていただけに、上位進出に向けて、これでは乗れない。(日刊スポーツ評論家)