チーム状態が悪いチーム同士の戦いになった。細かくはふれないが、先頭打者に対して巨人は2度、中日は3度も四球を出すなど、フラストレーションのたまる試合だった。

そんな試合を制した巨人と中日の差はどこにあるのか? 答えは単純だ。巨人が得点はすべて真っすぐを仕留めたもの。バッターの基本中の基本ともいえる「真っすぐを仕留める技術」が、中日を上回っただけだった。

巨人の得点機を検証してみる。初回1死二、三塁からの岡本和の先制犠飛は、中日の先発・小笠原の投じた内角146キロの真っすぐだった。コースはそれほど甘くはなかったが、1ボールというバッティングカウントでもあり、少し詰まったが力でレフトまで運んだ。

同点で迎えた5回1死一塁からの丸の2ランも、カウント2-1のバッティングカウントだった。小笠原の外角を狙った真っすぐがシュート回転で甘く入った失投を見逃さなかった。

試合を決定づけたのは、7回無死満塁からの坂本のタイムリーだった。3連続四球を与えた清水の147キロのど真ん中真っすぐ。1ボールから強振せず、甘い球を打ち損じないようにセンター方向に打ち返したようなスイングだった。

ダメ押しは7回1死満塁、吉川のセンターへの犠飛だった。この一打だけが、カウント1-2のバッテリー有利のカウント。打った真っすぐも3番手・福の内角球で、吉川の見事な技術力が光った。

ここでもう1度、振り返ってもらいたい。吉川以外の殊勲打はすべてバッティングカウント。打者有利のカウントから岡本和は持ち前のパワーを生かして思い切りのいいスイングをした。丸の1発もバッティングカウントから小笠原の失投をイメージしていたのだろう。完璧に捉えていた。坂本のタイムリーも1ボールから。第2打席で3ボールからの真っすぐを打ち損じているだけに「今度は打ち損じないぞ」という丁寧なバッティングだった。

中日打線は京田が真っすぐをホームランにしたが、甘い真っすぐを見逃したり、空振りしたり、打ち損じていた。これは打つ技術以外のプラスアルファが足りないから。同じ真っすぐを打つのでも、バッティングカウントから思い切りよく力を込める、失投のイメージを膨らませる、打ち損じないように必要以上に力まない、というプラスアルファが必要だ。同じ真っすぐを打ちにいくのでも、それぞれが打ち損じないためのプラスアルファを持ってスイングしている。

あえて名前は出さないが、状況や展開を考えず「真っすぐを待って変化球に対応する」というだけでは、甘い球が来ても打ち損じは減らないだろう。経験の差といってしまえばそれまでだが、狙い球を絞ったり、技術力以外のプラスアルファを考えてほしい。打撃力の向上につながるはずだ。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 1回裏巨人1死一、三塁、左犠飛を放つ岡本和(撮影・菅敏)
巨人対中日 1回裏巨人1死一、三塁、左犠飛を放つ岡本和(撮影・菅敏)