阪神は2回にウィルカーソンが大量失点を喫したのは誤算だった。しかし、この巨人戦でカード勝ち越しを決めていたチームの勢いと流れをもってすれば、序盤のビハインドをはね返す可能性は秘めていたはずだ。

その意味でも、3回の好機を生かせなかった攻撃はポイントだった。ロドリゲス、梅野の連打で無死一、二塁。9番投手の石井はバントの構えから2球を見逃して1-1。3球目のバントを一塁手の中田に処理されて三封となった。

阪神サイドの動きからは「100%バント」の作戦だった。しかし、石井が初打席で、二塁走者はロドリゲス、中田が突っ込んできていた状況を考えると成功率は低い。それならば「代打糸井」で早めの勝負を選択する手もあった。

ここで1、2点返しておけば、巨人のリリーフ陣ならひっくり返せたかもしれない。ベンチの思惑も同じだったはずで、だからこその「送りバント」だったのだろう。しかし、その決断はリスクが高かったということだ。

石井のバント失敗後、続く中野が投ゴロ併殺で逸機。石井が2回途中からリリーフしたばかりで、その後も投げさせるつもりだったのだろう。だがブルペン要員をみても劣勢の場面で投げさせる人材はそろっていた。思い切って代打で勝負に出てもよかった。

阪神は後半戦にヤクルト、巨人に勝ち越し、これでシーズン100試合を消化した。ただ仮にヤクルトが勝率5割でいった場合、阪神は2勝1敗ペースでも追い越すことができない計算だ。大型連勝がほしいところだけに、もったいない1敗になった。

(日刊スポーツ評論家)