開幕から広島にてこずってきた阪神が、ここにきて3連戦3連勝。才木が6回まで3安打、9つの三振を奪った。

権藤 広島は才木の真っすぐとフォークの見分けがついていなかった。4番の西川にしても、ボール球をつかまえる天才のような打者だが、それがフォークに空振りするのだから、よほど見極めが難しいのだろう。逆にそれが才木の投球スタイルで、その持ち味を存分に発揮した立派なピッチングだった。

今季6試合目の登板は5回を除いて毎回走者を出したが、要所で三振をとった。9奪三振のうち7個がフォークで、2個がストレート。プロ野球史で“フォークの神様”と称されたのは中日杉下茂だった。1966年(昭41)は阪神監督にも就いている。

権藤 スギさんのフォークは別格だよ。ただ勝負にいくフォークは1試合に5、6球しか投げなかったらしい。巨人の川上さんとの対決の場面とかにね。「いくぞ、いくぞ」と見せかけて真っすぐで勝負した。才木もいいストレートを投げる。特長があるようには見えないが、あそこまで相手打者が振ってしまうフォークには球質の良さが感じられる。現状の立ち位置は“一流”になる可能性を秘めながら、その第1段階を通過したレベルだろう。

“権藤、権藤、雨、権藤”とうたわれた伝説の男は「ただし…」といって引き締めた。

権藤 今の才木をもってすれば、三振がとれなくても、それなりの投球はできるだろう。お互いなんとなく優勝から離れていくチーム同士で、勢いのない広島が相手だったということもある。でも力のあるチーム、一流打者と対したところで勝つために大切なのは浮かれないことだ。ピッチャーがある時点で油断して長所、持ち味が消えてしまうことはよくある。そこはだれかがうまく導くことだ。【取材・構成=寺尾博和編集委員】