やはり大混戦の首位争いは見応えがある。初回は両チームとも先頭打者を出しながら無得点。緊迫感のある試合になった。

こういった大一番で、勝負を分けるポイントは「四球」だと思っていた。先取点を挙げた西武は、2回1死からオグレディが四球で出塁した後、呉が左翼オーバーの適時二塁打。一方のソフトバンクも3回、連続四球をきっかけに逆転。ソフトバンク東浜も西武のエンスも制球力がある先発だが、「甘いところには投げられない」というプレッシャーからの四球だった。

そんな大一番の中で、今宮が見事にプレッシャーをはねのけた。3回、連続四球と犠打で1死二、三塁、今宮へのカウントは3ボールになった。もちろん、3番に起用されている打者だし、得点圏に走者もいる。積極的に打ちにいっていい場面だった。

ただ、打席に立っている側から見ると、打ちにいくためには想像を絶するほどのプレッシャーがかかる。この試合でいえば「一塁は空いているし、次打者の柳田は不調。そんなに甘いところにはこないかも」と考えてもおかしくない。結果がボール球を空振りしたり、ストライクゾーンを打ち損じて内野フライを上げてしまってはいけない。1球、見逃してもいいだけに、打ちにいくとなれば相当な勇気が必要になる。

プレッシャーの中で今宮は、やや外寄りの甘い真っすぐをジャストミート。センターの左へ、痛烈な逆転タイムリーを放った。おそらく「真っすぐが甘いところにきたら1、2の3で強いスイングをしよう」と考えていたのではないか。

言葉にすると簡単そうだが、意外に難しい。つい当てにいって浅い外野フライや内野フライでもいけないが、力が入り過ぎても引っかけて遊ゴロになりがち。思い切って打っても引っかけないで打球を上げる技術が必要になる。

今宮といえば「思い切りのいいバッター」というイメージがあるが、自らの持ち味を発揮した。今試合前までバッティングカウントの1-0、2-0、2-1、3-1は77打数36安打、打率4割6分8厘。今季は3-0からヒットを打つのは初めてだが、11四球。相手バッテリーは積極的に打ってくると警戒していた結果だろう。

今後もプレッシャーのある試合は続くが、この一打は今宮にとってもチームにとっても大きな一打。次に同じような状況になっても、積極的に打ちにいける。相手にもプレッシャーをかけられる。

連勝と連敗でゲーム差は大きく変わるし、ここまでくれば星勘定する意味はない。大事なのは目の前の試合に集中し、とにかく連敗をしないこと。目の離せない白熱した首位争いは、しばらく続くだろう。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対西武 3回裏ソフトバンク1死二、三塁、今宮の2点中前適時打で大盛り上がりのナイン(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対西武 3回裏ソフトバンク1死二、三塁、今宮の2点中前適時打で大盛り上がりのナイン(撮影・梅根麻紀)