米国戦はピッチャーの継投がポイントの1つになるだろう。ベンチは調子が良いからと引っ張らす、危ないと察したら、機を見てつぎ込んでいくことだ。
あれほどの強力打線が相手だから、わたしなら目先を変えながらつないでいくことを考える。宮城も、宇田川もいる。早め、早めの“攻めの継投”で封じたい。
メキシコ戦の勝利は見事だった。9回に二塁打の大谷がみせたパフォーマンスがチームを鼓舞し、吉田の四球でお膳立てができた流れに村上が乗じた。無死一、二塁だから、併殺を避けたり、走者を進めようという考えもよぎるはずだ。しかし村上は“細工”をせず、自身の打撃に徹したのが最高の結果をもたらした。
先発の佐々木は抜群の立ち上がりで、5回はクリアすると思った。2死から不運なヒットが続いた後の3ランは予想外の失点だ。後で振り返ったとき、もう1つ球種を覚える必要性を感じるのだろう。
その佐々木も独特の雰囲気で、走者をだして動揺しないわけがない。短期決戦はきめ細かさが求められる。投手コーチがマウンドで“間”を置くことも大切だった。それは山本のときも同じことが言えた。
個人的に決勝の先発は山本を予想していた。そこはベンチが準決勝がもっとも大事と踏んだことで「第2先発」の起用に踏み切ったのだろう。
オーストラリア戦と比べて新フォームがフィットしていなかったようだ。マウンドなど環境の違いか、内容は芳しくなく、まさかの2失点だった。
7回の吉田の同点3ランは見逃せばボールのようなチェンジアップをとらえた。さすがの技術力で、メジャーでも通用すると自信を深めたことだろう。ヒーローに値する一打だった。
今回の侍ジャパンは常に明るいムードで、受け身になっていない。さらに手ごわい米国戦は、捕手に起用する人材にも注目している。ダルビッシュ、大谷らメジャー組の存在は安心感をもたらすから大きい。
(09年WBC投手コーチ、日刊スポーツ評論家)