さほど調子がいいと思わなかった巨人戸郷翔征だが、完封勝ちで1点差ゲームに勝利。負ければ再び借金を背負うところだったが「エースの貫禄を発揮した」とたたえていい試合だった。

ただ、これで首位を走る阪神の追い上げ態勢が整ったかと聞かれれば「まだ足りない」と感じてしまう。その原因は、3番を打つ坂本勇人の状態に物足りなさを感じたからだ。

まだ本来の調子を取り戻していないと確信したのは、1点をリードした6回裏だった。先頭の吉川が二塁打で出塁し、2番の丸が送りバント。何が何でも1点を取りにいく絶好のチャンスを作り、坂本が打席に立った。

左腕の石田の初球は外角低めのチェンジアップだった。見逃せば間違いなくボールだが、坂本は強振して空振りした。この場面、絶対に避けたいのは三振で、追い込まれる前に勝負をかけたい気持ちは理解できる。しかし犠牲フライを狙って高めの球に空振りするのであれば仕方ないが、ファーストストライクから外角低めの球に手を出す必要はなかった。

この空振りがDeNAバッテリーを楽にした。本来、石田という投手は低めに投げてゴロで打ち取るタイプだが、低めのボール球を振ったため、内角や高めへのつり球など、ボールくさいゾーンを有効に使われた。そして最後はカウント2-2からワンバウンドしたカーブを空振り三振に仕留められた。

本来の坂本の実力なら、狙い球を絞って打てる余裕があるはず。明らかなボールゾーンであれば、バットを止める技術もある。次打者がホームランを打っている岡本和だけに、バッター有利のカウントをつくれれば、厳しいコースへは投げにくくなる。それだけに初球のボール球を空振りしたのが、痛かった。今季の坂本はこのような犠牲フライでOKの場面で低めを空振りする場面を何度か見た。犠牲フライが0本なのも、それが響いていると思う。

第2打席でヒットは打っているが、4打数1安打で2三振。今試合前までの5試合は20打数4安打だった。4月は絶不調で5月に入ってから調子を上げていたが、この日の試合のようにボール球に手を出すようになると、再び調子を崩す可能性もある。

試合には勝ったため、坂本の好機での三振は目立たなかっただろう。それでも戸郷でなければ1点差を守れなかっただろうし、今季の巨人は打ち勝たなければいけないチーム。坂本の復調なしには、逆転は厳しくなるだろう。(日刊スポーツ評論家)

巨人対DeNA DeNAに完封勝利し、戸郷征翔(左)を迎える大城卓(撮影・河田真司)
巨人対DeNA DeNAに完封勝利し、戸郷征翔(左)を迎える大城卓(撮影・河田真司)
巨人対DeNA ナインを指さす巨人先発の戸郷(撮影・滝沢徹郎)
巨人対DeNA ナインを指さす巨人先発の戸郷(撮影・滝沢徹郎)
巨人対DeNA 8回表、力投を続ける巨人先発の戸郷(撮影・滝沢徹郎)
巨人対DeNA 8回表、力投を続ける巨人先発の戸郷(撮影・滝沢徹郎)
巨人対DeNA 1回裏巨人2死、空振り三振に倒れる坂本勇人。投手石田(撮影・河田真司)
巨人対DeNA 1回裏巨人2死、空振り三振に倒れる坂本勇人。投手石田(撮影・河田真司)
巨人対DeNA 4回裏巨人無死、坂本は左前打を放つ(撮影・滝沢徹郎)
巨人対DeNA 4回裏巨人無死、坂本は左前打を放つ(撮影・滝沢徹郎)