中日は最低でもカード勝ち越しをしながら、上位との差を詰めなければならない。1勝1敗で迎えたこのカードで3戦目、阪神は先発村上。戦前から、試合運びの大前提は見えていたはずだ。

中日はリーグ最低の得点数。それも得点数では同5位ヤクルトに約50点差をつけられている。言うまでもなく得点力不足。それでいてチーム防御率は阪神に続く好データを残している。

投手は踏ん張っているが、得点力で苦しむ。そして村上が相手となると、中日からすればロースコアに持ち込むことではじめて勝機が見えてくる。

初回、無死一、三塁で渡辺諒は一ゴロ。石川昂はホームへ送球して挟殺プレーで1死二、三塁。この判断はわかる。村上相手に先制点をやりたくない。だが、その後2死となってノイジーの遊ゴロを龍空がエラー。さらに前川の適時打でこの回2点を失った。

3回裏、同じく無死一、三塁で、大山の三ゴロに高橋周は三塁走者を気にする様子もなく、セカンドスローで併殺を取りに行った。結局、併殺の間に3点目を奪われた。

ここで疑問が湧く。ロースコアゲームのための、初回の挟殺プレーだったはずだ。失策でもくろみは外れたが、まだ序盤の3回に今度は併殺を優先。大きな3点目にもかかわらず、初回と異なる守備に、中日ベンチは何をやりたいのかと、感じる。

3回に併殺を優先したのなら、初回も併殺を完成させていれば、失点は1点で済んだ可能性がある。チームとしての方針が出ているのか、個人の判断に任せているのか。どちらにせよ、ちぐはぐに映った。

一方の阪神は初回、三塁走者近本の走塁に意図が感じられた。一ゴロになった瞬間、三本間でスピードを緩め、意識的に挟殺プレーを誘発し、一走中野、打者渡辺諒が進塁する時間を稼いだ。

捕手との距離を保ち、追わせる時間を稼いだのは近本の好判断。結果として、これが初回の2点につながった。

これが首位チームと5位中日との差だとしても、もう少し中日は細かい部分を丁寧に、ベンチも含めてしっかり確認しながら戦うべきだと感じた。

序盤の守備面でのちぐはぐさが、一方的な試合展開への落とし穴のように見えてならなかった。(日刊スポーツ評論家)

阪神対中日 4回裏阪神無死一塁、村上の投ゴロで二塁手龍空が一塁手木浪を二封、一塁へ送球し併殺とする(撮影・藤尾明華)
阪神対中日 4回裏阪神無死一塁、村上の投ゴロで二塁手龍空が一塁手木浪を二封、一塁へ送球し併殺とする(撮影・藤尾明華)