阪神優勝の原動力とされた「四球」を主眼に試合を見た。阪神才木、中日柳の両先発は5回までともに無四球。引き締まった投手戦だったが、阪神の方向性に揺らぎはない、と感じた場面があった。

0-0の4回、先頭の小野寺がチーム初安打で出塁。ここで2番中野は1-2までバットを振らない。結果はフルカウントから二ゴロ併殺に終わったが、好機拡大へ安易に打ちにいかない姿勢は明快だった。

今季の両チームの対戦成績を見ればわかりやすい。阪神201の安打数に対して中日195。本塁打も同8本対7本と大差はない。しかし得点は中日の55点に対して阪神が97点で圧倒、15勝7敗1分けと大きく勝ち越した。

独走Vと最下位争いしているチームの差はどこで生まれたのか。際立っているのは四球数で、このカードでも86対40と阪神が圧勝した。岡田監督は就任以来、選手に四球の重要性と価値を浸透、徹底させて得点増に結びつけた。単なる「四球力」という表現だけでは片付けられない「監督力の勝利」と言っていいだろう。

投手の立場で言えば、四球は勝負どころやそこに至る重要局面で本塁打を打たれそうな打者を避けるための大事な手段のひとつ。だが、今季の阪神打線で長打要警戒は好調時の佐藤輝や大山に限定される中で、これだけ四球が増えれば、優位に立てるのも当然だ。

四球は地味だが、価値は高い。それを岡田監督は改めて示してくれた。クライマックスから日本シリーズと続く短期決戦は何が起こるかわからない。だが、確かな監督力でセ・リーグを制覇した阪神が簡単に敗れる姿は想像できない。