今年のキャンプは宮崎からスタートしてからずっと曇りか雨だった。ヤクルト浦添キャンプで、初めて日差しを拝んだ。その爽やかな午前中のお日さまを浴びて見たシートノックは、「スキなし」と要約できる内容だった。

まず目を引いたのが外野からの返球に、中継を2枚入れていたことだった。キャンプでこの時期に、2枚の中継は、私の印象ではなかなか珍しいと感じる。

センターからの返球ではショートがセカンドベース付近に入ると、ファーストは中継が乱れたケースに備え、カバーできるポジションで構えていた。より実戦を想定したシートノックで、実際に中継プレーが乱れた時、すぐにカバーしてプレーを続行していた。意識の高さでシートノックできる体制が整っていると感じた。

内野陣も非常に意欲的で、グラウンドには明るさと、厳しさが共存していた。緊張と緩和と言えるだろう。例えば、併殺プレーでミスが出ても、途中で集中を切らさず、最低でも一塁でアウトにするなど、1つのプレーを成立させるまで、全体が引き締まって動いていた。

中でも村上は際立っていた。ヤクルトの昨年の失策数はリーグ3位。多いわけでもないが、堅守とまでは言えない。その中で失策が目立った村上は、この日のノックでも意欲にあふれていた。私が見ていた中では「ミスか? いや、何とか処理したかな」と思えるプレーでも、「もう一丁、お願いします」と、妥協せず動いていた。

一昨年は3冠王に輝き、年俸もぐんと上がった。実績を積み、それでいてまだ若い。言うなればチーム内では王様と言える立ち位置にある。だが、守備面での向上心と、周囲を盛り上げようとする声が、王様と思わせない。そこは村上の人間性としての度量だろう。

その村上の声があるから、周りも負けじと声の連係が取れている。それによって、いい意味で緊張しつつ、萎縮しないで全力プレーにチャレンジできる前向きなムードが醸成されている。こうした動きがベースになり、ここからさらに精度を上げていけば、今年のヤクルトは覇権奪回に抜かりはないと、他球団は警戒感を強めてくるだろう。

そこまでいい流れで全体練習に取り組んでいるのだから、ここは細部においても妥協しないでほしい。外野からの返球のラスト1球では、ホームへのピンポイント返球がずれる場面があった。それでも、OKとされてシートノックは終わったのだが、ここは内野手のようにホーム返球がズレたらやり直す徹底さを求めたい。

今はコリジョンがあるため、捕手はブロックができない。ゆえに、より返球の精度が求められる。外野手には自信がなければカットマンを使うなどして、正確を期してほしい。1点を争う試合中の判断として、そこは最重要事項だ。

最後に、ブルペンでは育成の沼田が良かった。真っすぐに加えてシュートとスライダー、さらに落差の大小によって2種類のフォークもある。今季のヤクルトは投手陣が課題だ。先発陣を見ても、新戦力が入り込むスキはある。

まず支配下登録を目指すことになるだろうが、この日のピッチングを見る限り、沼田にはそこに食い込んでくる可能性は十分にある。巨人を戦力外となってヤクルトに入団して2年目。沼田が巨人戦に登板するくらい成長すれば、そこも非常に楽しみになってくる。(日刊スポーツ評論家)

ダッシュで先頭でゴールするヤクルト村上(手前)(撮影・横山健太)
ダッシュで先頭でゴールするヤクルト村上(手前)(撮影・横山健太)
ヤクルト沼田翔平(2022年11月撮影)
ヤクルト沼田翔平(2022年11月撮影)