開幕カードで対戦する巨人と阪神が、オープン戦の開幕で対戦した。今は練習試合も多く、オープン戦の開幕に特別な気持ちはないだろう。ただ、昨年の阪神はぶっちぎりでペナントを制した日本一チーム。直接対決でも惨敗した巨人は、それなりに意識した試合になったのではないか。

試合は“巨人キラー”の伊藤将司が初回に7失点。若手主体のメンバーだった巨人打線にめった打ちにあった。巨人ファンにとって「今年は大丈夫」と思いたいところだろう。しかし参考にはなりにくい内容だった。

伊藤将という投手は、制球力を武器に内外角を広く攻めていくタイプ。そのため、紅白戦、練習試合、オープン戦など、打者の内角を厳しく攻めにくい試合では能力を発揮しづらい。ちょっとずつ甘くなった球を軽打された感じだった。

巨人打線も若い打者が多く、甘く入った球を狙っていくシンプルなスタイル。伊藤将なら追い込まれるまで内外角のどちらかに狙いを絞ってカウントが悪くなる前に勝負をかけなければいけない。しかし、まだそんなことをやる必要がない時期。初回の7得点を過大評価するわけにはいかないだろう。

それでも阪神から移籍したケラーは、素晴らしかった。育成選手のルシアーノも投げっぷりがよく、シーズン前には支配下選手登録されるのではないか。昨年、最大の弱点になったリリーフ陣の補強は効果がありそう。昨年のように試合中盤に粘り負けするような試合は減りそうだった。

エースの戸郷は1イニングだけで、真っすぐが高かったものの、悪いなりにも抑えられるだけの実力はある。開幕に向けて順調に仕上げていくだろう。

オープン戦とはいえ、巨人の勝利には意味がある。阿部監督も初回無死一、二塁から3番の門脇に送りバントさせるなど、いい意味で手堅い野球を実践してきそう。投手陣が立ち直る気配があるだけに、接戦で粘り勝てる試合は増えると思う。

まだオープン戦とはいえ、巨人が負けていれば嫌なイメージは残っただろう。逆に阪神からすれば、佐藤輝は好調そうだし、気にするような敗戦ではない。開幕までは1カ月ある。伝統の一戦でスタートを切る今シーズンを、今から楽しみにしている。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 1回裏巨人1死二、三塁、岡本和に先制右前適時打を許す伊藤将(撮影・前田充)
巨人対阪神 1回裏巨人1死二、三塁、岡本和に先制右前適時打を許す伊藤将(撮影・前田充)
巨人対阪神 巨人に7失点した伊藤将(左)とベンチの岡田監督(撮影・上田博志)
巨人対阪神 巨人に7失点した伊藤将(左)とベンチの岡田監督(撮影・上田博志)
巨人対阪神 8回表を終え、選手交代を告げる阪神岡田監督(撮影・河田真司)
巨人対阪神 8回表を終え、選手交代を告げる阪神岡田監督(撮影・河田真司)