先発転向を直訴した伊勢がどんなピッチングをするのか、楽しみにしていた。白組先発として初回を打者3人で終えた。森敬を遊ゴロ、蝦名を一飛、梶原を空振り三振に抑えた。
変化球を丁寧に投げていた。リリーフのようなパワーピッチから、より制球を意識し、外角の出し入れに神経を注ぎ、先発スタイルへの適応力を見せた。もっとピッチングを見たかったし、これは伊勢の投球幅が広がるとも感じた。バリエーションが増えることはいいことで、仮に中継ぎに戻ったとしても、得るものは大きいだろう。
これまでに中継ぎから先発転向を直訴した例は何人もいる。近いところで言えば西武平良になる。伊勢も自分から名乗り出て、競争の中に身を置いた。そこに、先発枠を奪い取るんだという決意を感じる。
強風の宜野湾のスタンドで、寒風に吹かれながら、伊勢の胸中を察した。伊勢が先発転向を表明したのが昨年12月。そして1月下旬にバウアーの獲得が決まった。これで先発はジャクソン、ケイ、東、大貫、バウアーと、確定的メンバーで5枚がそろった。
伊勢は球団から、6枠目を争うようなら中継ぎとしての起用を言い渡されている。つまり、先述した5人の誰かを抜くしかない。それを覚悟の上で、こうしてマウンドに立っている。もしかすると、バウアーの復帰が先に決まっていたら、伊勢の決断も多少は鈍ったかもしれない。
しかし、もう伊勢は走り出している。そして、三浦監督もそのチャレンジを認め、こうして勝負をさせている。乗り越えるには困難な壁が目の前にあるが、伊勢には開幕ギリギリまでそこに挑んでほしい。
球界には、選手にポジションを与える傾向が年々強まってきていると映る。その中で、昭和の匂いが漂う、先発枠を奪ってやる、もぎとってやる、との意気込みには熱いものを感じる。
DeNAは下克上から日本一に駆け上がったが、やはりセ・リーグでは3位に甘んじたという悔しさはぬぐえない。ゆえに、今年こそ、リーグを取って、そこから日本一連覇を掲げ「横浜奪首」とのスローガンにつながったと感じる。
伊勢のチャレンジは、そうしたチームのベクトルとも合致する。この泥くささ、精神が、チーム底上げには欠かせないものになりそうだ。DeNAの先発枠を巡る争いに興味は尽きない。(日刊スポーツ評論家)




