ピッチャーを大勢に代えないのかと思った。私が一番のポイントに感じたのは同点の8回裏、阪神が1死一、二塁で大山を迎えた場面だった。画面越しに、阿部監督が上着を脱いでいるように映った。ああ、田中瑛から大勢に交代するのだと思っていた。だが、田中瑛は続投した。

ベンチにも事情があったのだろう。ブルペンで準備していたが、大勢を投入できない理由があったとは思う。そうしたチームの内情を度外視して、感じたままを言わせてもらうなら、あそこは大勢でよかったと思う。その上で大山を抑えたか、あるいは打たれたかは、そこは勝負。結果を受け入れるしかない。

石川が先発して4回を3安打1失点。しっかり試合を作ったと思う。1点リードしていたが、勝利投手の権利目前の5回からグリフィンを投入した。ベンチもこの試合に何とかして結果を出したい、その意思表示に感じた。

石川からグリフィンとつなぎ、最後は大勢、マルティネスという流れだったと思う。ただ、同点の局面で大勢投入を決断しきれなかった、あるいは先述した何かの理由があったのかもしれない。それを踏まえても、開幕から阪神戦に4連敗し、どうにかして同一カードでの悪い流れを変えたかったはずだ。

勝利投手目前の石川を交代させたように、大勢の起用法にも、これまでとは異なる采配を見せていい場面だったと強く感じる。そういう特別なものを見せるべき試合であり、その最たる場面だったのではないか。

1点もやれない場面で、これからペナントを激しく競っていくライバル相手には、定石をある程度は壊してでも、ここは絶対に点はやらないという意気込みを出して良かった。

今季まだ始まって1カ月もたっていない。そして、巨人のリリーフ陣はマルティネス、大勢をそろえ強力だ。ならば、この日のように、意地でも負けられない試合ならば、思い切って大勢を同点で起用するくらいの大勝負も必要になってくるだろう。

それが、チーム全体を発奮させ、士気を高めることにもつながる。阪神に完敗して、このカード5連敗となった。同様に今季は広島にも分が悪い。そんな時こそ、阿部監督は自分の直感を大切に、思い切った手を打ってもらいたい。それが勝ちにつながらなくても、そういう戦い方をするんだという意思表示は、チームはもとより、見ている巨人ファンにも刺さるはずだ。

ここから阪神戦で、どこまで盛り返していくか。そして、阿部監督がどんな妙手を打ってくるか、とても楽しみだ。(日刊スポーツ評論家)

阪神対巨人 8回裏阪神1死一、二塁、大山に勝ち越し適時二塁打を許し、ベンチで厳しい表情を見せる阿部監督(中央)ら(撮影・前田充)
阪神対巨人 8回裏阪神1死一、二塁、大山に勝ち越し適時二塁打を許し、ベンチで厳しい表情を見せる阿部監督(中央)ら(撮影・前田充)