野球ファンにとって月曜は特別な日。先週を振り返って、今週に思いをはせる。識者に回顧と展望を聞いた。パ・リーグ編は小谷正勝氏(80=日刊スポーツ客員評論家)。
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乱暴な言い方で申し訳ないが、過去の栄光など生ゴミと同じと思っている。すがっても勝てないし、技術は日進月歩。今、優れている人間に勝る者はない。
現状、NPBでベストの投手は西武の今井達也だ。一択と言っていい。投球動作の要諦である、軸の移動に極めて高い精度の再現性があり、センスと投げる球が完璧に合致している。
足を上げて作る軸は、方向付け、ねじりなどさまざまな仕事をしている。それらを傾斜の中でこなしながら、平行に移動していく。複雑な軸の動きを制御できれば、ボールも自在に操ることができる。私はこのロジックを「コンパス理論」と呼んでいる。コンパスは同じ円を無限に描くことができる。軸が一定なら、動作は完全に再現できる。
後は制球を取るか、パワーを取るか。局面を見ながら、インパクトの爆発力を調整できれば無双だ。今の今井は、理屈とセンスが見事にかみ合っている。
状況によっては、サインなしのオール直球で3球三振が取れる。技術に迷いがなく、打者を待ってどんどん投げるので見ていて気持ちがいい。過去と比較するのは好きじゃないが、2000イニング以上で与四球率1位の土橋正幸さん、通算320勝で「精密機械」の異名を取った小山正明さんに似ている。
小山さんは、不規則に揺れながら動くパームボールも完璧に制球していた。「どうやって?」と聞くと「20年かかった」と笑っておられた。要は努力の結晶であり、今井も同じ過程を踏んで今がある。難しいことを、涼しい顔でやってのける。プロの中のプロだ。
西武にはもう1人、今井よりエンジンのでかい投手がいる。高橋光成はテイクバックの時、ライトからセンター方向に大きく手首を引く。リリースポイントが一定しない理由はここにあると見ている。手首を軸足の下方向に引く感覚で投げると、リリースは高い位置で一定に収まるだろう。一度下げたものは、上げないと投げられないからだ。
歴史を振り返って屈指の今井がいて、スケールで上回る高橋も復調の中にある。貯金4、首位と1差の3位は先発陣が原動力。長い連敗は考えづらく、台風の目となるにおいがする(日刊スポーツ客員評論家)




