竹丸には厳しい1球になった。4回、サノーに2ランを打たれるのだが、ベテラン涌井との投げ合いの中で考えると、この1球の怖さというものが、より鮮明に浮かび上がる。
竹丸は2回のサノーの第1打席、真っすぐで見逃し三振を奪った。序盤は7連続三振もあり見事な立ち上がり。前回登板では、制球にバラツキがあり、竹丸らしさが感じられなかったが、この日は変化球は低めに、真っすぐも丁寧に。この1週間できっちり修正してきた成果がうかがえた。
自分のピッチングに手応えもあったと思う。そして4回2死二塁。サノーに対してカウント3-1。竹丸は真っすぐを選択する。この日の投球なら詰まるだろうとの自信はあったはずだ。だが、内角を狙ったボールは甘く入り、左翼スタンドに運ばれた。
前打席での真っすぐ見逃しの残像は、サノーにはポジティブに働いた。そして打ち損じをしてもまだフルカウントだという精神的な優位がいい方に作用した側面もある。3-1までの4球はすべて変化球。もう真っすぐが来るだろうと割り切っていたサノーに、竹丸の選択した真っすぐが、ちょうど合ってしまった、ということだ。
かつ、3ボールにしてしまったことで、簡単に歩かしたくないという心理が働いた可能性はある。ただ、一塁は空いていた。いかに当たりが出ていないとは言え、外国人に3-1から真っすぐが内角に甘く入れば、もっていかれてしまう。
竹丸は最悪四球もやむなしの考えが持てたなら、また違った展開もあっただろう。ここは経験だ。調子がいいからこそ、細心の注意を払うべき場面、ということだ。降板してから、その思いをかみしめているだろう。
対して、涌井。5回2死一、二塁。ダルベックに対してカウント1-1から、内角にシュートをきっちり制球して遊ゴロ。1-1というカウントが味方をした。最悪、シュートで攻めすぎて内角ボール球になったとしてもまだ2-1。それを踏まえて、今度は外角を攻めることも視界にあったはず。そういうカウントの特性をよく熟知している。決して甘く中には入れないぞ、との意思を感じたボールだった。
1球を巡る攻防が、両投手の中にあり、見応えのある投手戦だった。そして常に最後まで、冷静に判断できるか。その部分で老練な涌井に軍配が上がったと言える、そんな試合だった。(日刊スポーツ評論家)




