シーズン終盤の東京ドームには、いい思い出がない。近年は夏場以降に巨人が地力を見せ、阪神が失速するという構図が定番になった。金本監督も現役時代からそれを体感している。夏のロードが始まった頃、こんな話をしていた。「8月末の東京ドームは毎年やられていたイメージがある。9月の中盤までね」。長いシーズンの最後に、スパートをかける体力があるか。チーム力の差が顕著に表れる時期でもある。

 金本監督の就任とともに、阪神は超変革を旗印に掲げているが、それは若手育成だけではない。夏場の失速を葬り去ることも課題のひとつである。金本監督は必要なものとして、まずは「体力」を口にし、次に「メンタル。あきらめない姿勢」を挙げた。就任2年目の今年は8月を13勝7敗1分け(24日時点)と大きく勝ち越している。近年にはない好成績だ。指揮官のいう精神力が備わりつつあるのだろうか。

 そこで思うのは、中谷の成長だ。シーズン中盤まで、金本監督から何度もメンタルの弱さを指摘されてきた。それが今ではミスをしても、帳消しにする打撃を見せている。24歳に芽生えた反骨心が、チームに勢いを与えている。【阪神担当=田口真一郎】