慌ただしくチームは3台のバスに分乗してキャンプ地・宮崎を後にした。1日の韓国・斗山戦のゲームセットでホークスの春季キャンプ日程はすべて終了した。明日3日からヤフオクドームでオープン戦(対阪神)が始まる。選手たちにとっては「鍛錬」から「ふるい落とし」のサバイバル戦開始となる。

 ジャージー姿でバスに乗り込む選手たちの中に笑顔の男がいた。プロ16年目を迎えた吉村だ。「ここ数年の中で、一番いい状態でキャンプを終えることができました。まだ長打は出ていないですけど、いい感じで打てているのでこれからですね」。昨年は8試合の出場にとどまった。横浜、DeNA時代を含めて1軍定着後、最低の数字だった。チーム内ではもうベテラン組に入るが、老け込むわけにはいかない。今季から大胆に左足を上げる「一本足打法」に取り組んだ。この日の斗山戦は、主力組のほとんどが、欠場して福岡に戻る中、「5番右翼」で先発出場。1打席目に四球を選ぶと、5回に巡ってきた2打席目に右投手から強烈な打球を中前にはじき返した。「若いときみたいにはいかないかもしれないけど(一本足の)フォームもつかんできた感じなので」。楽天戦(2月28日)でも左腕西宮から中前に適時打を放った。しっかり結果は残した。ちょうど10年前。吉村は34本塁打を放った。「あの時の感じのような…」。手に残る感触を思い出すように、左足を上げると、バットのヘッドを大きく前に突き出すようなしぐさをした。つかんだものを手放すわけにはいかない。かつて「ヘラクレス」と呼ばれた男は、雪辱の2文字を大きな胸に誓っている。【ソフトバンク担当 佐竹英治】