ロッテ福浦和也内野手(42)の通算2000安打が射程圏内に迫っている。4月22日時点であと27本。「まだまだ」と話す福浦の大記録に、「残り1ケタくらいにならないと実感ないでしょうね」と同意したのが井口資仁監督(43)だ。5年前、監督も日米通算でその偉業を成し遂げた。

 あんなに華々しい1発になるとは、予想していなかった。2013年。今年と同じくロッテを担当していた。舞台は夏の仙台。6回、振り抜いた初球147キロが雨上がりの夜空を切り裂いた。一時勝ち越しの左中間ソロで2000安打を決めた。「あれが一番、マー君を追い詰めた試合だったね」。今年1月、井口監督はそう振り返った。相手は同年、24勝0敗の無敗神話を残した楽天田中将大(現ヤンキース)だった。

 メモリアルアーチとか、祝砲とか、言い方はいろいろある。その年、田中は28試合212回を投げて被本塁打はわずか6本。規定投球回をクリアした投手の中で群を抜いて少ない。敵地で響く「井口コール」が耳に残った。「これは勝った、1面2面3面で井口さん展開だ」と思った。メインと別のサイド原稿も、いくつか用意していた。

 ところが、である。終わってみれば試合はサヨナラ負け。朝刊は完投の田中が1面を飾った。「マー君、神の子、不思議な子」とはルーキーイヤーに当時の楽天野村監督が言った言葉だが、「持ってる」ってこういうことかと思った。もちろん田中はすごかった。が、用意した井口さんの原稿は一部お蔵入りした。いろんな意味で、忘れられない2000本目になった。

 今となれば、昨年現役引退試合で9回に同点弾を打ち、劇的な延長サヨナラ勝ちを呼んだ井口監督もやはり「持ってる」だった。運とは言いたくない。努力し、継続し、地力を付けてきた人のもとにはドラマが生まれる。「福浦和也」の2000安打目はどんな物語だろう。予想しても、きっと現実は超えてくる。楽しみに、今年も準備したい。【ロッテ担当 鎌田良美】