オリックスが27日、「誤審騒動」に関し、日本野球機構(NPB)宛に26日に送信した文書を球団ホームページで公開した。特例として「続行試合」を要求しているが、これは無理がある。

 騒動は、22日のオリックス-ソフトバンク10回戦(ほっともっと神戸)で、延長10回にソフトバンク中村晃が打った右翼ポール際への打球を巡ってのものだ。

 審判は当初、打球をファウルと判定したが、ソフトバンク工藤監督のリクエストによってリプレー検証が行われ、判定を本塁打に覆した。

 試合後、オリックス福良監督、長村本部長が球場の審判員室で、審判団と約20分間、リプレー検証の確認作業を行った。責任審判の佐々木昌信氏は「当初はポールに(打球が)隠れたように見えたので本塁打としたが、後で(コマ送りなどの映像を)見たところ、ポールの前に白いものが見えた」と説明。「判定が正確ではなかった」と誤審を認めた。翌日には友寄審判長、仲野パ・リーグ統括が謝罪に訪れた。

 NPBは26日、野球規則7・04に基づき、続行試合は行わないと決定し、オリックスに通告した。野球規則7・04には「審判員の判断に基づく裁定については、どのような提訴も許されない」と書かれている。

 7・04には前後がある。全文は以下の通りだ。

 「審判員の裁定が本規則に違反するものとして、監督が審議を請求するときは、各リーグは試合提訴の手続きに関する規則を適用しなければならない。審判員の判断に基づく裁定については、どのような提訴も許されない。提訴試合では、リーグ会長の裁定が最終のものとなる。審判員の裁定が本規則に違反するとの結論が出た場合であっても、リーグ会長において、その違反のために提訴チームが勝つ機会を失ったものと判断しない限り、試合のやり直しが命ぜられることはない」。

 ここでいう「本規則に違反する」とは、ルール適用の間違いのことだ。例えるならば、エンタイトル二塁打を三塁打にする、などを想定している。今回、審判はルール通りにリプレー検証した。

 オリックスは以下の主張をしている。「パシフィック・リーグアグリーメント別紙22「NPBリプレイ検証制度」第3項(※1)に「確証のある映像がない場合は審判団の判断とする」と規定されており、映像により当初の裁定を覆す確証が得られない場合は、当初の裁定を採用することになっていながら、わずか1時間後に誤審を認めるような杜撰(ずさん)な検証によって裁定を覆したことは、同項に反しており、明らかなアグリーメント違反である」。

 だが、この主張はおかしい。確かにリプレー検証は方法論として丁寧さに欠けたかもしれない。それでも、試合中に映像で本塁打という確証を審判が持ったかどうかは、気持ちの問題なので、審判にしか分からない。試合後に見直した際には別の見解を持ったにせよ、試合中は確証を持ったからこそ、当初の判定を変えたのだろう。アグリーメントでは、リクエストのリプレー検証で出た決定に異議を唱えることは許されておらず、唱えた場合は監督は試合から排除される、と規定されている。

 さらにオリックスは、パ・リーグのアグリーメント第47条にある「野球規則と競合する場合は、アグリーメントが優先する」という主張をしている。これは正しい。だが、アグリーメントに違反しているのは、リプレー検証の結果に異議を唱えているオリックス自身だ。

 審判側にも、誤審以外にも問題はあった。試合後に監督らを審判員室に入室させ、リプレーを「一緒に再検証」することは、本来あってはならないことだ。井原事務局長は「現場の状況から球団と一緒の検討という事態になったかもしれないが、やらないと定めている。やらないことをやってしまった」と不手際を認めている。興奮した状況であっても、毅然(きぜん)とした態度で入室を拒否するべきだった。審判にはそれだけの威厳が求められる。入室が騒動の発端となっているのは間違いない。

 オリックスは続行試合に関して「特例措置」と書いている。これは、自らも「ルールを曲げなくては再試合は無理」だと承知しているということだろう。リーグに対して「ルールを曲げろ」と主張することは、スポーツの原点からして無理がある。

 誤審によって、決勝点を奪われてしまったのだから、オリックスが怒りたくなる気持ちは理解できる。1勝のためにどれほど選手や関係者が努力しているか考えれば、同情もする。だが、審判も人間である。誤審を減らすためにリプレー検証を導入したが、それでも人間である以上は、常に正しい判定ができるとは限らない。むしろ、いつかは必ず間違える。間違えを認めた上で、謝罪もしている。NPBはリプレー検証の方法については、コマ送りを使わないなどの改善策も打ち出している。

 今後に向けた詳細な改善策を持って、オリックスは折り合いをつけるべき時だ。【NPB担当 斎藤直樹】