6月27日のヤクルト戦(神宮)の7回裏。中日ベンチが少しバタバタした。

 マウンドに立っていたのは、17年のドラフト4位ルーキー清水達也投手(18)。無死一塁でヤクルト主砲バレンティンを三振に打ち取った直後だった。昨夏の甲子園で花咲徳栄の抑えとして胴上げ投手となった右腕は、その日、プロ入り初めて1軍に昇格した。1イニング打者3人、無失点でデビュー登板を終えた。

 プロ初奪三振と思われた記念球は、ベンチに渡された。しかし、ベテラン荒木雅博内野手(40)が“クレーム”。荒木は最後まで記念のボールの行方に目をこらしていた。「打ち取った球は、球審がポケットに戻していた。だから、その球をベンチに戻して欲しいとアピールしてたんです」。球審がポケットから出したボールをマウンドに返され、清水はきょとんとしていた。そしてそれをベンチからの要求で投げ返した。受け取った荒木は笑顔を見せていた。

 昨年2000本安打を達成した荒木にも記念の1安打目があった。まだ19歳だった97年6月11日。広島戦(広島)で高橋建投手から初安打を放った。そのときの記念球も塁上にいる荒木が気づかないうちにベンチに戻ってきた。しかし、矢野輝弘捕手(現矢野耀大=阪神2軍監督)が、ボールの行方を追っていて、本当の記念球をベンチに取り戻してくれていた。「矢野さんが、行方を見続けて渡してくれました」。荒木の背番号は「2」。荒木が入団するまで矢野がつけていた背番号だった。先輩が見せた気遣いは、背番号とともに、きっちり受け継がれていた。

 「自分では気づきませんでした」とはにかむ清水。「2018年6月27日・ヤクルト戦・神宮球場・初奪三振・打者バレンティン」。そう記されたボールは、いま清水の手元にある。【中日担当 伊東大介】