子どもたちに写真入りサインカードを手渡すソフトバンク工藤監督(2015年2月7日撮影)
子どもたちに写真入りサインカードを手渡すソフトバンク工藤監督(2015年2月7日撮影)

ソフトバンクは、今年も2月に宮崎で春季キャンプを張る。育成も含め全選手がA、Bの2組に分かれて行う。工藤公康監督(55)は、今年もB組も含め、精力的に敷地内を歩き回ることだろう。

工藤監督は就任1年目から、直筆サインを書いたカードを配っている。1年目には背番号にちなみ8100枚書いた。その後も就任後ずっと続いている。夜、宿舎に戻り数百枚に、1枚1枚丁寧にサインを書いている。練習中はファンにサインを書くことができないからだ。子どもを見つけるとポケットからカードを出して手渡している。時には大人にもサービスする。

工藤監督の思いがこもったカードが、店頭やネットで売買されている。だいたい1000円から3000円の値段が付いている。球団関係者は「本当に残念です」と嘆く。エンゼルス大谷の直筆サインカードに数百万の高値が付いたというニュースなどが流れるが、それはカード発行会社が選手にギャラを払い、発売されたカードのパックから出現したものの話。日本でも正式に取引されるのは、そういう商用カードで、キャンプで直接書いてもらうサインは、どんな有名選手でも本物か証明できず、落書き扱いにしかならない。それでも取引されるのは、球団が発行したカードを工藤監督が手渡すため、球団公認サインとみなされているためだという。

通算224勝、監督でも4年で3度日本一。そんなレジェンド左腕の直筆サインは貴重だとは思う。個人的な売買まで球団が制限することはできない。だが、工藤監督は売り物を配布しているわけではない。

キャンプは1年で一番、監督、選手たちとファンが身近に接することができる場所。選手たちも可能な限りファンサービスをしているし、ほとんどのファンはルールを守っている。ファンがなだれ込まないように、警備員が必死でしゃがんで柵を支えている。今年も何本ものポールが折れていくだろう。

工藤監督はサインを断る時も「アイム ソーリー ヒゲソーリー」とダジャレを言ったり、突然ブロックサインを出して場をなごませる。昭和のコントのような姿を見ることができたファンも楽しい思い出になるだろう。今年も工藤監督はカードを配る。その1枚、1枚が売られることなく大事にされることを願いたい。【ソフトバンク担当 石橋隆雄】