練習を終えた巨人高橋(右)はファンサービスでいっしょに写真に納まる(2019年2月3日撮影)
練習を終えた巨人高橋(右)はファンサービスでいっしょに写真に納まる(2019年2月3日撮影)

何事も「徹底」が肝心だ。巨人ドラフト1位の高橋優貴投手(22=八戸学院大)は、ファン対応に手を抜かない。「僕も野球が好きで、よくグッズを集めたりしていましたし、キャンプ地巡りをした記憶もあります」と目を輝かせてプロ野球選手を追いかけた少年時代がもとにある。

新人合同自主トレ最終日の1月24日。午前9時から昼すぎまでの練習後、体のケアのためのマッサージ、数件の取材が、息つく間もなく立て込んだ。ジャイアンツ球場を出たのは、選手では最後の17時過ぎ。日もすっかり暮れ、肌に刺さるような北風が吹いていた。

やや疲れた表情で、マウンテンバイクに乗り、約10分先の選手寮を目指すと、球場の外には約50人のファンの列が。すると、高橋は迷うことなく、ペダルを止めた。寒空の下、サイン、写真撮影に応えること約30分。全てを終えると、ファンから拍手が起こった。「気をつけて帰ります!」と笑顔を振りまきながら、軽快に坂道を駆け上がっていった。

もちろん、投手としてマウンドで結果を残すための努力も欠かさない。新人合同自主トレ期間中は、全体練習、昼食後に、毎回のように室内練習場でネットスローに励んだ。納得のいくまでフォームを何度も確認しながら、誰よりも遅くまで姿を見せていた。自らと向き合うことを苦にせず、ただひたすらに、成長を求めた。

時には同期が居残り練習を行う中「今日も疲れましたね。早く帰ってゆっくりします」と自主練習を行わない日もあった。例年とは違った調整ペースで、ケガに注意しながら状態を上げていく難しい状況の中、休養を優先する決断には意思が見えた。

1軍で迎えた宮崎キャンプでは、5日のシート打撃で初登板。陽岱鋼、阿部、岡本から三振を奪い、周囲の評価も、うなぎ上りだ。「もし開幕1軍でデビューができて、初めは、たまたま抑えられるかもしれないですけど、同じバッターと何度も対戦するので、今のままじゃ抑えるのは厳しいと思います」と、自分に手厳しい左腕が、グラウンド内外で見せた「徹底力」。自主性が求められるプロの世界で生き残るために、必要な力を秘めている。【巨人担当=桑原幹久】

シート打撃に登板し、力投する巨人高橋(2019年2月5日撮影)
シート打撃に登板し、力投する巨人高橋(2019年2月5日撮影)