毅然(きぜん)とした態度に、一岡のプライドを見た。5月24日東京ドームでの巨人戦。2点リードの7回に登場し、1死一塁から代打中島に投じた初球がヘルメットに当たった。激高したベテランに詰め寄られ、両チームベンチから選手、首脳陣が飛び出す事態になった。もちろん危険球退場。この場面で一岡は、いち早く帽子をとって謝ったが、自分から1歩も下がらなかった。

翌日のベンチ裏で、改めて中島に謝罪した。その場に居合わせた人に聞くと「遠慮せずに(内角に)投げてきてよ」というような言葉をかけられたそうだ。互いに常識人なのだろう。ここまではいい。では次回対戦はどうするのか。厳しいコースにはおそらく投げにくくなる。一岡は言った。「投げないと、やっていけないので」。迷いなどみじんも感じられなかった。

かつて大瀬良、今村とともに「カピバラ3兄弟」といわれた。女性ファンから大人気の優しい顔立ちが、その由来だ。ちなみに、性格も優しい。それでも戦いに赴く者の悲壮な覚悟と、勝負師のプライドを胸に宿している。一岡が勝利の方程式に組み込まれる理由の一端が、わかった気がした。【広島担当 村野森】