侍ジャパンの1次ラウンド全勝突破を見届けた日刊スポーツ取材班が、珍道中? を振り返る。

   ◇   ◇   ◇

火鍋屋のお姉さんは強かった。

台湾入りした2日。ニッカン取材班は宿泊ホテル近くの有名店で決起集会した。ここの女性店員さんが親日家なのか、料理を持ってくるたびに絡んでくれた。どことなくお笑いコンビ「ハリセンボン」近藤春菜似で常にニコニコ。聞けば19歳の学生さん。優しい風貌に似合わず柔道部だったという。「じゃあ技をかけてみて」と立ち上がると、いきなり表情が一変して背負い投げをかけられた。腰が砕けた記者を、彼氏らしき店員さんが遠目であざ笑っていたのが忘れられない。

数日後、今度は侍ジャパン会沢がベンチで妙齢の女性と話し込んでいた。台湾の女性は強いぞ、油断するな。おせっかいな忠告をしにいくと「何言ってんすか…9年前にもお世話になった通訳さんですよ」とあきれられた。

実は会沢、10年秋に日本代表として台湾インターコンチネンタル杯に参加した「隠れ台湾通」だったのだ。「あのころは全然ご飯が合わなかったのに、今は台湾料理が全部おいしい。オッサンになったんすかね」とニヤリ。経験豊富なベテランは頼もしい。

そんな会沢も、1次ラウンド3戦目の台湾戦は肝を冷やしたという。大会初先発フル出場で8-1の完勝。とはいえ、序盤は完全アウェーの中、ピンチを背負っては我慢の連続だった。「ホント、勝てて良かった。昨日だけで3キロやせましたわ」と心から安堵(あんど)した表情が印象深い。日の丸を背負う重圧を再認識し、火鍋と小籠包にまみれた自身の台湾ライフを回顧。3キロ減どころか3キロ増の恐れもあるわが身が恥ずかしくなった。【佐井陽介】