また1月4日がきた。楽天元監督の星野仙一さんが70歳で亡くなって2年。一報は2日後の6日だった。未明に先輩の電話でたたき起こされた。「星野さんが亡くなったと出ている」。鈍器で頭を殴られた感じがした。かけられるところに電話をかけた。誤報であってくれと願いながら、誰にもつながらず、事実なんだろうと思い始めていった。そんな心境を思い出す。

しかし、記憶は残酷でもある。あれだけ取材して、お世話になった人なのに、今は日々の仕事の中で星野さんを思い出さない時間が増えている。それでも、ふとした瞬間がある。最近は、楽天島内の契約更改のニュースを見た時。昨年12月26日、2200万円アップで年俸1億円に達した。

「会場でリストを見たら島内が残っていた。足が速いと聞いてたし、それなら『行け』と言ったんだ」。

星野さんは、よく自慢げに語っていた。11年ドラフト6位。明大の後輩だから、と思われるのは心外だった。特長が頭に残っていたから指名に踏み切った。育成をのぞき、最下位指名だったが、今や同期入団の出世頭だ。もし、星野さんのひと声がなければ、島内の運命は違っていただろう。

足が速いから-。星野さんのドラフト哲学も思い出された。10年秋の就任直後、秋季練習中に選手を見回し「平均点が多い」とぼやいていた。「スカウトは失敗したくない。だから、どうしても平均点を取ってしまう」。新人は一芸に秀でた選手を、が信条だった。

球団方針と衝突した年もあり、望む選手を取れないことも珍しくなかった。そのたび、ぼやきを聞かされた。それでも、星野イズムは徐々に楽天という組織に浸透していったように思う。昨秋ドラフト。1位は俊足・小深田、2位は大砲候補・黒川、3位はパワーピッチャー・津留崎。星野さんの評価を聞きたいなあ。【11~14年楽天担当=古川真弥】