日本シリーズの期間中、東京ドームでは都市対抗野球が行われる。巨人は京セラドーム大阪を本拠地とする。

戦前にあった「東京ドームを使えない巨人は不利」の論調は、当てはまらないと自分は思う。原監督は京セラドームを得意としている。通算22勝9敗。ほぼ毎年、同球場で公式戦が行われ高い勝率を誇る。単なる相性で片付けられないデータ。下で支える職人集団の存在を見逃せない。

番記者として巨人を8年担当した。顔を覚えたのだろう。年を重ねるごとに、グラウンドを整備するスタッフに聞かれる機会が増えた。「どんなささいなことでも教えてください。上原投手は、マウンドの状態について何か話していましたか」「内海投手は、問題があるとか言ってませんでしたか」。彼らが目指していたのは東京ドームの再現。「せっかく来てもらえる。何とか同じ条件でプレーしてもらいたいので」と、ベンチ裏のブルペンまで完璧を求めた。

細部までプロ意識が浸透していた。ある年「野手の方は、何か話していましたか」と聞かれた。「どういうことでしょう」と返した。「土を踏み込んだり蹴ったりする動作は、打席の中でもあります。足もとの感覚が微妙に違うと、影響が出ると思うので」。ダイナミックなスイングをする小笠原(現日本ハムヘッド兼打撃コーチ)の感想を、特に知りたがっていた。

あらゆる手を尽くし、土の成分、ブレンドの割合、粒の大きさまで研究していた。どの球場にも職人がいる。ただ、いち記者からも貪欲に情報の端緒を得ようとするこだわりは、強い印象として残っている。

31試合で勝率7割1分。偶然ではここまで勝てない。「地の利」を根拠に有利不利は語れない。【宮下敬至】