今季限りで阪神を退団した上本博紀内野手(34)が現役引退を決断したことが21日、分かった。他球団移籍の道を断念したことを自身で発表した。
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数年前、上本が「職業観」について教えてくれたことがあった。「僕、野球選手だからというだけでチヤホヤされるのが苦手なんです。他の仕事のしんどさも少しは分かっているつもりなので」。その顔つきはいつになく真剣だった。
早大時代、練習休日をバイトに費やした時期があった。派遣会社に登録してさまざまな仕事を経験。イベント会場の設置業務、パン工場のライン作業…。中でも引っ越し代行業務を手伝った時に「この人たちの方が間違いなく自分より大変」と痛感したという。
「あれはいい経験をさせてもらいました。プロ野球選手という仕事は恵まれすぎているんだと、分かることができましたから」と振り返っていた上本。「プロ野球選手」という肩書が外れた後も、グラウンド上と変わることなく、新たな職務に全力を注ぐ姿を想像する。【遊軍=佐井陽介】