“パッキャオ”がヤクルトの英雄になるかもしれない。ドラフト5位並木秀尊外野手(21=独協大)は「球界を代表するスペシャリストになっていきたい」と走塁で王者を目指す。史上2人目の6階級制覇を果たしたフィリピンの伝説的ボクサー似の顔立ち。ドラフト4位元山から命名された愛称で、チャンピオンロードを駆け抜ける。

チーム初対外試合となった17日DeNA戦の1回、4球目に詰まった。「ガンッ」とバットが鈍いゴングを鳴らすと、快足を飛ばした。三塁前に転がったボテボテのゴロを内野安打に。4回の第2打席には投前にたたきつけ、失策を誘った。この日、バットに当ててから一塁到達までの最高は3秒93。プロの俊足左打者がセーフティーバントを試みて、4秒を切れば速いと言われる。右打者の並木は、雨で足元がぬかるむ中、振り切ってからのスタートだからすごい。

19年2月の大学日本代表選考合宿で、サニブラウンに勝った男に勝った。1歩目を踏み出してから計測する50メートル走で、5秒32をマークした。13年の陸上全日本中学選手権100メートル走でサニブラウンに勝った日本ハムドラフト2位五十幡(中大)は5秒42だった。“3段論法”で100メートルの日本記録保持者を上回った。

大学時代は通算24盗塁。二盗失敗はなく“無敗の男”だが、プロではさらなる技術の習得が必要だ。「間合いがアマチュアと違って長いので、スタートが切りづらい」。キャンプ中は森岡内野守備走塁コーチから1対1で走塁指導を受ける場面もあった。塁にいるだけで、ジャブのようにじわじわと相手にダメージを与える存在へ…。拳ではなく、足でセ界を制する。【ヤクルト担当=湯本勝大】

ヤクルト5位並木秀尊(2020年12月1日撮影)
ヤクルト5位並木秀尊(2020年12月1日撮影)