スポーツ界は「94年世代」が熱いと言われている。競泳の萩野公介に瀬戸大也、フィギュアの羽生結弦、バドミントンの桃田賢斗、野球ではエンゼルス大谷翔平…。阪神でも、16日に本塁打&6回途中無失点で6連勝を導いた藤浪ら、94年生まれがチームの中心となっている。開幕前には矢野監督が「大山がキャプテンをやったり、近本が選手会長をやったり。お前たちの代で強いタイガースを作ってほしい」と開幕投手に指名した藤浪へエールを送った。1軍日本人メンバーでは、94年世代がトップの7人だ。

そんな「華の世代」の1つ下、95年生まれで現在阪神では唯一の1軍メンバーが、熊谷敬宥内野手(25)だ。3月28日DeNA戦で1軍昇格。8回裏の守備から公式戦初の右翼で途中出場すると、青木の右翼フェンスギリギリの大飛球をジャンピングキャッチし、見せ場をつくった。ここまで代走、守備固めで8試合に出場。4年目を迎えた背番号4が、持ち味を発揮している。

10日DeNA戦では1点リードの9回に代走から今季初盗塁。矢野監督も「ナイスランやった。途中から出た選手もチームの力になってくれている」とたたえた。限られた出場機会で結果を残せる選手がいることも、首位を走るチームの強さといえる。

内外野こなせるユーティリティープレーヤーとして存在感を高める一方、打撃への意識もぬかりない。4月はここまで2軍戦に3試合出場し、10打席に立った。1軍で打席に立てていない分、昼に2軍戦に出場しナイターへ向かう「親子ゲーム」で感覚を維持。「(1軍で)打者一巡して回ってくることもあるから。毎年のことだけど、ゲーム勘を養うのはいいこと」と平田2軍監督は目を細める。昨季1軍では38試合で16打数5安打、打率3割1分3厘。成長を続けるバットでも、来る日へ向け準備を続ける。

東日本大震災から10年を迎えた3月11日には「僕が野球で少しでも勇気を与えられたら」と故郷仙台を思い、決意を新たにしていた25歳。華の94年世代に比べ、地味だなんて言わせない。地道な練習が、スポットライトを浴びる日につながっている。【阪神担当=中野椋】