やられたらやり返す-。スポーツの世界の決まり文句。でも、これほどまでにストレートに口にすると新鮮に聞こえる。23日楽天戦(楽天生命パーク)前の練習で、西武辻発彦監督(62)が、投手陣に向かって言った言葉だ。「みんなね、プロ入る前はアマチュアで高校野球、大学、社会人で負けたら終わりという場面で苦しい失敗もいっぱいしただろう。けど、プロでもそうだけど、やられても次の日に取り返せるチャンスはプロの場合はある。とにかくやりなさいという話しをしたんだよ」。奮い立たせていた。

その前日22日のオリックス戦(京セラドーム大阪)だった。3点リードで迎えた9回裏。2死一、二塁でジョーンズを三ゴロに打ち取った当たりを、三塁佐藤が二塁に送球した。ほとんど走っていなかったジョーンズではなく、直前に一塁走者の代走に入っていた俊足の小田に対し二塁封殺を狙った。判定はリクエストの末、セーフ。送球判断が勝負の行方をひっくり返し、サヨナラ負けを喫した。

そんな劇的敗戦の直後だけに、指揮官は直接伝えたかったのだろう。その試合は、高橋が楽天涌井との投手戦を演じ、8回に平良、9回に前夜に打たれた増田が3者凡退で“リベンジ”。追う展開で食らいつき、引き分けに持ち込んだのは、投手陣のプライドがあったから。試合後、辻監督は「ナイスゲームだよ。よく踏ん張ってくれた」。試合の流れ、相手先発の力量、チーム状態、あらゆる側面から見た言葉だった。勝てるに越したことはない。でも前日の惜敗を引きずらず、接戦を演じた選手たちへのねぎらい。時には辛口なことも言う“辻語録”。厳しさの中にも、親心が詰まっている。【西武担当 栗田成芳】