DeNAが交流戦で調子がいい。6日に今季初のサヨナラ勝ちを決め、首位タイに立った。

2番伊藤光、コーチの配置転換など、いろいろな要因が重なるが、タイラー・オースティン外野手(29)のハッスルプレーは起爆剤となった。交流戦での打率3割4分8厘(規定打席到達の70人中17位)5本塁打(1位タイ)12打点(5位タイ)という打撃はもちろん、走塁面が際立つのだ。

交流戦の前あたりから、とにかく全力疾走が目立つ。5月21日のヤクルト戦(神宮)では、2回に左翼線の打球でヘッドスライディングし二塁打とした。三浦大輔監督が「ああいう好走塁は必要。オースティンは常に狙っている。チームにいい影響を与えている」と絶賛した。

交流戦の2カード目は、楽天戦(楽天生命パーク)だった。相手先発は涌井秀章、田中将大、早川隆久で、苦戦も予想された。だが1戦目の1回、四球で出塁したオースティンは、次打者宮崎敏郎の左前打で三塁まで走る好走塁を見せた。6番ソトの打席で暴投があり、得点。難敵涌井から初回に2点を奪った。最終的に1点差で逃げ切っただけに、この得点は大きかった。

ハイライトは6月1日のソフトバンク1回戦(横浜)だ。1-3と2点を追う6回2死。オースティンシフトで内野手が外野ゾーンまで下がっていた。遊撃左へのゴロに全力疾走。内野安打とした。続く宮崎の初球。「走ってもいい」(三浦監督)というグリーンライトのサインに、オースティンが188センチ、100キロの巨体を揺らして二塁へ走った。来日初盗塁。しかも「甲斐キャノン」のソフトバンク甲斐拓也からだ。この場面は得点が入らなかったが、球場の雰囲気が一気に盛り上がった。この試合は8回に牧秀悟が満塁から二塁打を打って逆転勝ちしたのだが、明らかに潮目が変わったのは、オースティンの二盗だった。カード頭を取ったDeNAは、9年ぶりのソフトバンク戦勝ち越しにつなげた。

DeNAは春季キャンプからオープン戦の序盤にかけて、さかんに盗塁を仕掛けていた。開幕時にオースティンとソトの両大砲が不在であることから、機動力で長打力を補う算段だった。ところが、開幕後は鳴りをひそめ、ここまで両リーグ最少の11盗塁。それだけでなく「次の塁を狙う姿勢」も乏しかった。ところが、ここに来て、そのオースティンが積極走塁を再三敢行。チームに刺激を与えた。セ・リーグ最下位かつ、交流戦の通算では12球団最低勝率のDeNAだが、助っ人長距離砲の姿勢がチームを初優勝へ導こうとしている。【DeNA担当 斎藤直樹】

DeNAタイラー・オースティン(2021年6月6日撮影)
DeNAタイラー・オースティン(2021年6月6日撮影)