高校野球の各地方大会が行われている。大阪桐蔭高の3年時に甲子園春夏連覇を達成したロッテ藤原恭大外野手(21)は“あの夏”から3年たった今も、鮮明に覚えている。

「勝って当たり前のチームと言われていましたし、自分たちもそれだけの力はあるというのは思っていました。それで成長できた部分というのが大きかったです。自分の力だけじゃないので。仲間に恵まれて」

王者の底力を示した試合がある。北大阪大会の準決勝、履正社戦。3-4で、9回2死走者なしまで追い込まれた。それでも走者が2人出て、藤原に打席が回ってきた。相手は同大会初先発の投手。疲れと大阪桐蔭の勢いからか、制球も乱れ始めた。

しかし、アウトになったら試合終了になることに変わりはない。それでも藤原は初球から強く振った。ファウルになった。

「こういう大事な時こそ、自分のやっていることをやらないといけないと思って。あそこで1球見送っていたら、自分の中ではアウトになってたのかなと思います」

カウント1-2に追い込まれたが、そこから四球を選んだ。押し出しの後、左翼への適時打で藤原も二塁からヘッドスライディングで生還。土壇場からの逆転で激戦を制した。

昔も今も、藤原は臆せずに振り抜く。「ひるまずにやることが自分の中で大事だったので。これからもそこは。大事な場面でも、1球の重みがあるところでも、自分のやるべきことは貫いていきたいなと思っています」。その強いメンタルと個性で、6月に停滞していたロッテを勢いづけたのは間違いない。

一番乗りで沖縄代表が決まり、中盤や終盤に差しかかった地区も増えてきた。緊迫の場面は、全国各地でますます増える。炎天下の土壇場、大勝負に必要なことは何だろうか。藤原は「難しいですね…」と言いながらも、そう長くは考えなかった。

「やってきたことを変えずにやることが、一番大事だと思っているので。自分のプレースタイルを貫いてやるのが、一番だと思います」

そう、明確に答えた。【ロッテ担当=金子真仁】