鳴りやまない拍手に、輝くフラッシュライト。オリックスの本拠地最終戦だった21日西武戦(京セラドーム大阪)に、選手会長の吉田正尚外野手(28)が帰ってきた。

セレモニーでは「たった今調べた情報によりますと…。ホームゲームで貯金16! 皆様の声援のおかげです」と感謝の気持ちを込め「ここからまたCS、日本シリーズとしびれるゲームが続きます。まだ“有給”が残っている方はぜひ使って頂き、家族、友だちと一緒に、僕たちと戦っていきましょう!」とファンを和ませた。

吉田正がサプライズ登場したことに、場内は驚きを隠せなかった。プロ1、2年目に腰痛を発症し、コンディション管理には人一倍、注意してきた。18年から3年連続で全試合出場していただけに、無念の負傷離脱だった。

9月3日ソフトバンク戦(ペイペイドーム)の9回。遊撃内野安打を放った際の全力疾走がきっかけで「左太もも裏の筋損傷」を負った。執念で、翌4日は患部にテーピングをグルグルに巻いた状態で代打出場。だが、1球もスイングすることなく、見逃し三振に倒れ、苦笑いを浮かべて球場を後にした。5日に出場選手登録を抹消され、離脱。リハビリ生活を余儀なくされた。

長期離脱と思われた矢先…。9月26日楽天戦(京セラドーム大阪)で、吉田正は帰ってきた。およそ3週間の超速回復で、1軍復帰。代打で登場し「(拍手は)ファンの方がそれだけ期待してくださっている証拠だと思う。本当にありがたいです」と感謝した。

吉田正の復帰後、チームは5勝1分けと波に乗り、ロッテから首位を奪回。この勢いで、ペナントレースを突っ走ると思われたが、再び…悪夢が起こった。

10月2日のソフトバンク戦(京セラドーム大阪)。4回の第3打席で、大関の投球を右手首付近へ死球を受けて負傷交代。暗雲が垂れ込めた。試合中に病院に向かい、大阪市内の病院で精密検査を受けた結果「右尺骨骨折」の診断を受けた。復帰から1週間での即離脱…。ぼうぜんとした。

現在もリハビリ生活中。右手首にサポーターを巻きながら、マイクの前に立ち、ファンを喜ばす姿は「プロ」そのもの。シーズン中の広報談話で話題となっていた「お待たせしました、お待たせし過ぎたのかもしれません!」。温和な表情でグラウンドを歩く背番号34…。誰もが、その日を待っている。【オリックス担当=真柴健】