1カ月にわたったソフトバンクの宮崎春季キャンプが終了した。

藤本新監督体制で迎えた今キャンプは、自主トレ期間に主力に新型コロナウイルス陽性者が出た影響などもあり、例年以上に若手が抜てきされ、新鮮で活気のある練習が見られた。

2年目井上や6年目の田中正ら、新戦力候補が輝いた。そんな中で、記者個人的な目線で気になった、キャンプ「陰のMVP」を紹介したい。プロ入り10年目を迎えた高田知季内野手(31)だ。高田からはキャンプ序盤の打撃練習から「今年は何か違うな」という雰囲気を感じさせられていた。体が大きくなったという風には見えないが、構えやスイング、打球にこれまでにはなかった力強さを感じていた。

実戦が始まると、宮崎では紅白戦と対外試合の7試合出場で打率4割の好成績をマーク。最も存在感を放ったのは、対外試合初戦だった22日西武との練習試合。途中出場し、最初の打席で送りバントを成功。次は四球を選び、3打席目は1死一塁でエンドランを成功させ、右前打で一、三塁の好機を演出した。これには、就任当初からチーム打撃にこだわってきた藤本監督も「高田なんかは見事に決めてくれて、ああいうのが得点につながってくる」とうなっていた。

まさに「藤本流」野球の申し子的な働きを見せている高田だが、なかなか紙面で取り上げるチャンスがなく、このコラムという場を使わせてもらった。打撃について話を聞いてみると「手応えはありますよ。練習でもいい当たりが増えている。むだな動きをなくして、バットが一番出やすい形で振れている」と明るい声だった。キャンプ中に金星根監督付特別アドバイザーから指導を受けて取り組む、バットを寝かせて構える新スタイルがなじんできているようだ。

今年も実戦では途中出場が多く、藤本監督が掲げる「競争」の中でも、なかなかチャンスをもらいにくい難しい立場だ。それでも高田は「途中出場が多くなるというのはわかっている。イメージは守備固めというのがあると思いますが、それを覆せるように少ないチャンスを生かしていきたい」とサラリ。熱いものを胸に秘め、虎視眈々(たんたん)とレギュラー取りを狙っている。【ソフトバンク担当 山本大地】