リリーフが投手の礎となる。勝利のために目の前の試合に全力で戦うのは言わずもがな。一方で、どのチームも将来を見据えることも必要になる。今の起用法が、この先ずっと続くとは限らない。たとえば、リリーフ投手が先発転向することも珍しくない話だ。

楽天石井一久GM兼監督(48)は「リリーフの心構えに、投手の大事な心構えの要素がいっぱい入っている」と話す。試合を作る先発と、目の前の打者を封じることに全力を尽くすリリーフ。同じ投手でも役割は全く異なる。

「100球をマネジメントするか20球をマネジメントするか。(先発は)第1打席の攻めや第2打席の攻めも状況で変わってきたりするし、打者を覚えるというものはすごく大事。先発はそういうところを養えるかなと思う。リリーフはどちらかと言ったら、自分の球をいかに20球投げるかというところに集中する」。リリーフは、より投球の精度を上げるために集中できるポジションだ。

石井GM兼監督も経験したこと。プロ1年目の92年から、ドジャースに入団するまでの10年間。244試合中77試合でリリーフ登板した。高卒3年目の94年は10先発に対して44試合で救援。若手時代にブルペン待機の機会があった。「自分の悪い例を出しちゃいけないけど、先発でここがこうなっている、なんかちょっとこうタイミングが早くなったり遅くなったりと、いろいろ考える時間がリリーフには。感覚を研ぎ澄ますためにはリリーフっていい勉強だと思います。(先発とリリーフの)両面を見られたので、いい勉強かなと思いますね」とうなずいた。

ソフトバンク千賀滉大投手や、オリックス山本由伸投手もリリーフとして頭角を現した。石井GM兼監督は「一概にそればっかりとは言えないですけど」と前置きした上で、リリーフの大切さを説く。

楽天では、鈴木翔天投手(25)が売り出し中。150キロ超えの直球を武器に、今季13試合で防御率0・84。抜群の安定感で、ブルペンを支えている。そんな若き左腕も、キャンプは先発投手としての調整も行った。近い将来、先発転向の選択肢もある。指揮官は「来年先発するかもしれないし、このままリリーフでいくかもしれないですけど。今の経験はすごく生きると思います」と話した。勝ちにいきながら育成も。各チームの采配にはどんな思いがあるのか。起用は奥が深い。【楽天担当 湯本勝大】