目を背けたくなるような痛々しい姿で、日本ハム上沢直之投手(28)は現れた。先発した16日西武戦で、打球が右足に直撃。8回途中まで投げ6勝目を挙げたが、試合後に喜びの声を聞くことは出来なかった。両手には松葉づえ。ことの重大さを物語るように、患部は巻かれた包帯によって巨大化していた。

気持ちを整理する時間もなく、取材に応じてくれたのかも知れない。それでもイスに腰かけながら「勝利投手」として質問に答え、仕事を全うした。取材後、心配する視線を感じたのだろう。「フィニーッシュ!」と両手で「セーフ」のポーズをつくり、笑顔を見せてくれた。エースは、最後まで気丈に振る舞っていた。

苦い記憶がよみがえった。19年6月、左膝に打球が当たり、皿が真っ二つに割れた。左膝膝蓋(しつがい)骨の骨折で、全治5カ月でシーズンを棒に振った。「もう野球が出来ないかもしれない」という絶望からはい上がってみせた。今回は骨接合術を行い、実戦復帰まで当初の約8週間から4~6週間に短縮できる見通し。最初の診断よりも時間を要さずに済んだが、エースはここまでフル回転。手痛い離脱となった。

18日の試合前には、札幌ドームのグラウンドで軽めのキャッチボールする姿があった。右足はサンダルを履きながら、周囲を安心させる笑みを浮かべていた。自身のインスタグラムでは「膝蓋骨骨折の時に比べたら絶望感はないです!」と発信。もう前を向いて、歩き始めていた。再び訪れた試練。また頼もしさを増した姿で乗り越えてくれると信じている。【日本ハム担当 田中彩友美】