まだ小学5年生だった。阪神日本一の85年夏、初めて阪神タイガースの試合を生で見た。当時西武ファンなのだが、仲の良い友達2人が阪神ファンで盛り上がっていたこともあり、猛虎フィーバーをひと目、見てみようと平和台球場での8月11日、中日戦に父と行った。一塁側の阪神側内野席に入ったが満員で、三塁側へ。チケットの半券には、手書きでの変更書きが残っている。

地鳴りのような声援とトランペット。正面に見える黄、白、黒色でびっしり埋まっていた。何度も行っている平和台の右翼席が揺れて見えたのは初めてだった。翌8月12日の日刊スポーツを見ると書き出しに「大阪から駆け付けた本場猛虎ファンが陣取る右翼席は、その瞬間、総立ちになった」とある。やっぱりあの怖さすら覚えた迫力は、大阪から多くの虎党が詰めかけたからだった。

試合は阪神が勝って大騒ぎだった。バース、掛布に真弓が2発の4発、中日もモッカと上川がアーチをかける空中戦。2度目の指揮を執る岡田彰布監督(64)も5番二塁で出場し左前へ安打を1本放った。

あれから37年、1カ月後には65歳になる岡田新監督が再び「アレ(=優勝)」を目指す。背番号「80」は24日の秋季練習初日から、選手たちの練習態度、技術などを遠くから見極めていた。この秋には二遊間のレギュラーを絞り込む。1軍と2軍の色分けが今季以上にはっきりと分けられる。生存競争の中で、選手たちの意識がどう変わるのか、のんびりとはできない大事な11月を、こちらも気を引き締めて取材したい。

小学生当時にビビった虎党のあの大声が、再び遠慮なくできる日を、コロナ禍が1日も早く終息することを待っている。【阪神担当=石橋隆雄】

秋季練習初日を終え会見を行う阪神岡田監督(撮影・清水貴仁)
秋季練習初日を終え会見を行う阪神岡田監督(撮影・清水貴仁)