忘れたくても忘れられない。いや、むしろ忘れたくないのかもしれない。ソフトバンク泉が、「痛恨の1球」をプロ野球人生の成長の糧として、秋の宮崎キャンプに臨んでいる。
マジック1で迎えた10月2日のロッテ戦(ZOZOマリン)。優勝かV逸か-。シーズン最終戦の大一番。2点リードの6回から2番手で登板した右腕に、悪夢が待っていた。1死一、二塁から山口に逆転3ランを右翼席に運ばれた。何とかこの回は投げ終えたが、チームは3-5で敗戦。2位だったオリックスに、逆転優勝を許してしまった。試合後は泣き崩れ、チームメートに肩を支えられながらグラウンドを後にした。
キャンプイン前日の2日。宮崎入りした宿舎で泉は「あの日」の試合動画の再生ボタンを押した。「キャンプが始まるし、やっぱり見ておこうかな、と思って。あんな経験はもうしたくないし、あの経験があったからこそ、しっかりできたんだ、と言える日が来るようにと思って」。振り返れば、悔しさ、情けなさ、失望感…。いろんな感情が今も胸に宿る。「単なる自分の負け、チームの負けだけじゃないんです。九州のホークスファンの期待を裏切ったんです」。翌日の移動便では福岡に戻るのが怖かったと言う。「怒った人たちから、何かされるんじゃないかとビクビクして…」。CSファイナル敗戦後、1週間あった休日も福岡市内の自宅に引きこもった。「コンビニへも帽子を目深にかぶって行きました」。今季30試合に登板したが、疲労感は予想以上だった。ペイペイドームでの秋季練習でも投球できなかった。
気持ちをリセットした。来季も中継ぎで投げる決意で宮崎入り。第1クール2日目の4日は初めてブルペン入りし、45球を投げた。「直球だけでしたが、思ったよりいい感じで投げることができました。ほんと、あの経験があったから、と言えるような来シーズンにしたいですね」。泉にようやく笑顔が戻ってきた。【ソフトバンク担当 佐竹英治】




