“投げる哲学者”が年俸とプロ野球選手の関係性について持論を展開した。巨人の高梨雄平投手(30)が11月30日に契約更改し、3300万円アップの年俸1億1000万円でサイン(金額は推定)。念願の1億円プレーヤーとなったわけだが、高梨の受け止め方は一筋縄にはいかなかった。

■1億円で地に足が着く

「プロに入った時は1億円プレーヤーになりたいみたいなものはあったけど、上を見たらキリがない世界。年々やればやるほど野球界だけじゃなくて、それくらい稼いでる人は死ぬほどいるので、逆に地に足が着く」

■仕事の対価とクビ

頭を巡る思考が止まらない。年俸が上がったことで恐怖を感じるという。「年俸が上がれば上がるほど、コスパという言い方をしたらアレですけど、自分の仕事の対価が上がるわけで。けがしたときにクビになる恐怖が近づいて来る感じはしてますね。年俸が上がれば上がるほど身が引き締まる。そっちの方が正直大きい」

中継ぎとして今季は1度も離脱することなく59試合に登板。防御率2・14と安定感を見せ、25ホールドでチームに貢献。自身の仕事であるリリーバーを車のブレーキパッドに例えた。

■中継ぎはベンツのブレーキパッド

「メルセデスベンツの『ゲレンデ』は有名ですよね。その中で、中継ぎは結局どこかと言ったらブレーキパッドみたいだと思っている。替えは効く。ベンツのブレーキパッドって、何社で作ってるか知ってますか? 3社なんです。めっちゃ優秀だけど、それらの会社がもっとお金くださいと言ったら切られるかもしれない。(中継ぎも)そういう感じかなって思っている」

自分の立場を他のものに例え、客観的に見ることで、自身の仕事が何なのかを研ぎ澄ませていく。

■「コスパの悪い選手になるのが怖い」

「僕らが求められてるのはすり切れずに、車を安全に止め続けること。なかなか地味な役割に対して球団が1億円というお金を掛けてくれるのはすごく粋に感じます。同時に、どんどん自分がコスパの悪い選手になっていくのに恐怖を感じます。中継ぎポジションはやっぱりベンツのゲレンデにはなれないので、中継ぎっていうのは。ブレーキパッドとしてしっかり頑張っていきたいなと思います」

「1年目から野球人生の終わりに向かっていると思って走ってきた」と達観している。「これから10年は難しい。早くて2、3年でクビになっちゃうとも思う。すみません。悲壮感がある感じですけど、これが本心なので、頑張ろうと思っています」。自問自答が高梨の原動力だ。【三須一紀】