自分の意志は、ストレートに伝えていきたい。日本ハム伊藤大海投手(25)の、学生時代と変わらぬ歯に衣(きぬ)着せぬ発言が、心地よい。

これまで、J1コンサドーレ札幌や北海道のアマ野球などの取材に携わり、この12月、50歳を目前にして、初めてプロ野球担当に就いた。

主に日本ハムを取材いたします。よろしくお願い致します。

担当が変わり、苫小牧駒大(北洋大)時代に何度か取材していた伊藤と話す機会も、増えてきた。最近は来季の起用法について本人の思いを聞くことが、何度かあった。

今季はリリーフ登板でも結果を出したことで、新庄監督は、来季は抑えでの起用も考えているような発言をしているが、伊藤自身の強い先発志向は変わらない。11月に聞いた際は抑えについて「やりたくないことはやらないので、僕は」とニヤリ。自身の目標が沢村賞獲得にあることを明言し「言っていかないと後ろ(抑え)に回されそうなので、毎日、先発やりたいってツイートしようかな」と、ユニークなアピール法も模索していた。そういう発想もまた、面白い。

記者としても興味がある話題だけに、タイミングを見て心境の変化がないか、聞いてみたかった。8日の契約更改の後に、もう1度聞いて見た。新球場最初の1勝をつかみたいという目標も掲げているので、冗談半分で「抑えで出てきてサヨナラ勝ちで初勝利という形もあるのでは」と。少し考えると記者を見据え「しないです。頑固なんで」。しつこく聞いて申し訳なかったなという思いと、いつもながらの大海節に、思わず噴き出してしまった。

学生時代から、非常に興味深い言動をする選手だなと、思っていた。

大学時代のある出来事を思い出した。伊藤が苫小牧駒大4年時、北海道6大学リーグでのことだ。まだドラフト指名を受ける前だったが、既にドラフト上位候補と報道されており、相手ベンチから「やっぱりドラ1はすごい!」と、やゆするようなヤジが何回か飛んだ。

すると、ある回を抑えた伊藤がマウンドから突如、相手ベンチへ歩いて行った。これはまずいことになるかもしれない。報道する立場として、カメラのレンズを向けなければならない。すると、何やら数秒話した後、事もなげに、自軍ベンチに引き揚げてきた。

その後、相手ベンチのヤジは止まった。試合後、何を話したのか、言える範囲でいいのでと、尋ねてみた。詳細までは明かさなかったが「ちょっと話をしました」。メディアの方が期待するような、やんちゃなやりとりはないですよ…とでも言いたそうな、ひょうひょうとした顔だった記憶がある。

負けん気が強いのは知っていた。だが、そのときは、互いに感情的になりそうな場面で、もめ事にならないよう、上手に話を運んだのだろうと、推察した。ベンチには30歳以上年上の相手監督もいた。微妙なシチュエーション。騒動になるのではという場面で、すたすたと相手ベンチに向かっていく肝っ玉と、そこで冷静に対話できる23歳に、なかなかのタレント性を感じた。

一度大学を辞め、違う大学に再入学してプロ入りにつなげ、さらに1年目から2年連続2ケタ勝利。苦しみながらも、結果を出してきた。思いはいつも「直球勝負」で口にしてきたが、先日こんなことも話していた。「人として、大人の階段を上がれたらと思う。基本的にちっちゃいので(笑い)。周囲には言わないですけど、もっと自分のキャパを広げて、なんでも受け止められるように、大きい海のようになります」。プロ3年目の役割がどうなるのか。ゴリゴリ強気の投球に、ちょっぴり「大人」の雰囲気を加えた“ニュー大海”が新球場エスコンフィールド北海道で躍動する姿が、楽しみでならない。【日本ハム担当=永野高輔】

苫小牧駒大時代の伊藤大海(2020年10月12日撮影)
苫小牧駒大時代の伊藤大海(2020年10月12日撮影)